日本では入手困難な一次資料や文献を調査収集することができ,それらの資料に基づいて19世紀中葉から世紀末にかけてパリで隆盛したカフェ・コンセールや文芸キャバレー,あるいは労働者サークルという3つの異なる場における当時の出版物とシャンソンの関係を明らかにした。 これまでは出版物の研究とシャンソン研究はそれぞれ個別になされることが多かったが,本研究では双方を相互的影響関係のもとに捉え直し,総合的視座から考察することで,両者の緊密な関係を明らかにし,当時のシャンソンや詩の朗読やモノローグといった口承文化の実相と,それが当時の文芸や大衆文化に及ぼした影響を明らかにすることができた。
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