研究課題/領域番号 |
17K02593
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
和田 章男 大阪大学, 文学研究科, 教授 (00191817)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フランス文学 / プルースト / 失われた時を求めて / 音楽批評 / 草稿研究 / ワーグナー / ベートーヴェン |
研究実績の概要 |
本研究は、マルセル・プルースト(1871‐1922)における音楽受容と小説創造の関係に焦点を当て、『失われた時を求めて』を始めとするすべての著作、草稿資料、書簡の調査・分析するとともに、19世紀後半から20世紀初頭にかけてのフランス、特にパリにおける音楽演奏の記録、および新聞・雑誌等の批評言説を調査し、プルーストの音楽観を音楽受容史・批評史の中に位置づけ、相対化することを目的としている。 平成29年度はドイツ音楽、特に第三共和政時代(1871‐1914)にパリで人気を博したワーグナーとベートーヴェンを取り上げ、演奏状況を調査しつつ、プルーストがこれらの作曲家をどのように受容したかを考察した。 まずワーグナーについて、パリにおける演奏状況と批評言説の分析からコンサートにおける抜粋演奏による闘争の時代から、オペラ座で上演が始まる90年代の栄光の時代、そして20世紀には大衆化の時代に至ることを明らかにした。プルーストは草稿において、ワーグナー批評の場として、オペラ座、コンサート、サロン、自宅など当時の音楽受容のすべての場を試みていることも当時の音楽状況を反映するものとして興味深いが、特にユダヤ系の友人たちとの微妙な関係に配慮しつつ、神話的とされるワーグナー楽劇に「人間性」を見出し、小説において比喩として言及される楽劇は常に人間的心理に関わることを明らかにした。 パリではワーグナー楽劇のデカダンス的側面からの解放を目指して、20世紀初頭にベートヴェンが音楽界のヒーローに祭り上げられるが、そのような流れの中、プルーストはとりわけ後期弦楽四重奏曲を好むようになる。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲のパリにおける演奏史の調査により、プルーストの嗜好の歴史的位置づけを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りにドイツ音楽の中でもワーグナーとベートーヴェンという最も大きな存在についてかなりの資料収集を進め、ワーグナー関連では2本の論文を書き(ただし内1点はまだ未刊行)、ベートーヴェン関連でも口頭発表まで実施したので、ほぼ順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目にはプルーストとフランス音楽の関係に焦点を当てる。特にフォーレ、セザール・フランク、サン=サーンス、ドビュッシーを取り上げる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度ノートパソコンの購入を計画していたが、現在使用しているノートパソコンを継続して使用することとし、次年度とりわけ最終年度に予定している国際会議へ繰り越すこととした。
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