研究課題/領域番号 |
17K02605
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
酒井 健 法政大学, 文学部, 教授 (70205706)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バタイユ / 芸術思想 / 神話 / 神学 / 呪われた部分 / クロソウスキー / ナンシー |
研究実績の概要 |
本研究はフランスの作家ジョルジュ・バタイユ(1897-1962)の芸術思想を中心に三年度にわたって研究を進めている。この芸術思想の近代性批判の全体像を明示し、その後の継承と発展を明らかにすることを目的にしている。平成29年度は本研究の初年度で、バタイユの近代性批判の全体像解明へ向かった。 まず実績としては、平成29年4月22日と23日に慶應大学で開催された「バタイユ生誕120年記念国際シンポジウム」に参加したことである。講演予定の哲学者ジャン=リュック・ナンシー(体調不良のため当日不参加)を念頭に置いて発表「バタイユとナンシーにおけるニーチェの可能性と不可能性──神話の問題系を中心に」を行い、神話からバタイユの芸術思想およびその前後の世代の思想関係の解明に向かった。発表原稿は雑誌『多様体』(月曜社)第2号に掲載予定である。 他方でバタイユの1949年発表の重要書『呪われた部分 全般経済学試論 - 蕩尽』の翻訳を進め、これをちくま学芸文庫より平成30年1月に上梓した。バタイユの芸術思想は彼の経済思想とも深い関係にあり、この訳業は、彼の芸術思想を根底から解明するのに有益だった。また同月には法政大学言語・文化センター発行の紀要に「若きバタイユとシェストフの教え -「星の友情」の軌跡」を発表し、初期バタイユの哲学形成を解明し、芸術思想の理解のための足掛かりにした。さらに同年2月4日に東京藝術大学で開催された公開シンポジウム「「多様」と「特異」の作家ーいま、クロソウスキーを(よ)みなおす」に参加し、発表「神と神々のゆくえー20世紀フランス思想における神学の問題」を行った。これは神学思想からバタイユおよびクロソウスキーの芸術思想に接近する試みであり、翌年度の研究への橋渡しになった。年度末にはフランスへ調査に赴き、初期バタイユの芸術思想に関する貴重な資料と図像を入手できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度における本研究は、バタイユの芸術思想における近代性批判の全体像を解明することに向けられた。この点に関して上記の慶応大学での国際シンポジウムでの発表、バタイユの重要書の翻訳、紀要論文、そしてクロソウスキーのシンポジウムでの発表は有効に機能した。 バタイユの芸術思想そのものに関してはバタイユ研究に携わってから今日まで40年のあいだにある程度の理解に達しているが、近代性批判という今回の研究のアプローチに関しては、ジャン=リュック・ナンシーという現代フランスを代表する近代性批判の哲学者の思想から神話という新たな角度で迫る機会を得ることができた。また、翻訳を上梓した『呪われた部分 全般経済学詩論 - 蕩尽』はまさに経済および人間生活全般から近代性を批判した書であり、今回の研究に有力な手がかりを与えてくれた。また、紀要論文ではロシアの哲学者レフ・シェストフが若いバタイユに与えた影響を吟味した試みであり、彼の哲学思想の形成の特徴およびあり方を明確に把握し指摘して、成果をあげることができた。さらにクロソウスキーのシンポジウムではバタイユの芸術思想を伝統的な「線の美学」からの超出として特徴づけて、新たな目安を与えることができた。クロソウスキーというポスト・バタイユの思想家との関係を指摘できた点も成果として大きい。
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今後の研究の推進方策 |
当初に設定した目的をめざして、バタイユ以後におけるバタイユの芸術思想の展開をクロソウスキー、およびブランショを中心に進めていきたい。クロソウスキーに関してはその神学思想とシミュラークル概念の問題、ブランショにおいては文学表現の問題が大きなテーマになる。シンポジウム、講演会や論文執筆を通して成果の発表にも努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の出張は予定通り実施したが、精算が年度をまたいだため、今年度の経費として計上されていない。
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