2020年度は新型コロナ・ウィルスの感染がまさにパンデミックと化し、フランスに渡っての研究の進捗は不可能になった。しかしネットによるフランスの研究者との交流やフランス国立図書館などからの情報収集をもとにかなりの成果を上げることができた。 まずバタイユの芸術思想に関して新たな視点「メディア」を得たことが大きい、そこから人間と人間、人間と世界との間を結ぶ媒体として芸術作品を見てバタイユ独自の発想を探り当てていった。端的に言えば、メディアを伝達のためのツールと見ずに、それ自体として輝く、自律的な生の表出の場と捉えていた点にバタイユの芸術思想の本質を見出して、彼の初期から後期のテクストを読み直しを図ったということである。 具体的な成果としては日仏会館主催のシンポジウム「共同体と贈与ージョルジュ・バタイユの思想から」に参加し、口頭発表「バタイユとメディアの思想ー贈与が切り拓く境界域について」をオン・ラインで行い(2020年10月10日)、さらに大阪大学と京阪電車の共催よる「鉄道芸術祭 第10回」に参加し、バタイユの芸術思想を西欧現代社会の駅舎の建設とりわけスペインの建築家サンティアゴ・カラトラバの作品に関連づけて会場とオンラインで発表を行なった。「駅舎の建築と余剰の美学ーバタイユの全般経済学から」がその題目である(2020年11月10日)。 他方で、研究論文も順次、所属の大学の紀要に発表していった。法政大学文学部紀要には「ジョルジュ・バタイユと媒介の思想(1)ーシュルレアリスムと対立物の一致」(2020年9月30日発行)および「ジョルジュ・バタイユと媒介の思想(2)ー贈与と道徳をめぐって」(2021年3月15日発行)、さらに法政大学言語・文化センター紀要『言語と文化』に「ジョルジュ・バタイユの内的体験と媒介の思想ー「非-知の夜」の沼地から」(2021年1月29日発行)を発表した。
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