研究課題/領域番号 |
17K02611
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
松原 陽子 明治大学, 商学部, 専任教授 (10610371)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プルースト / フロベール / 生成過程 / イメージ / 無意志的記憶 / 絵画 |
研究実績の概要 |
『失われた時を求めて』において、オデットをめぐるイメージと色彩の変遷をたどり、その変遷が小説の主題にどのように結びつけられているのか考察した。この研究成果を査読付き論文「『失われた時を求めて』におけるオデットのイメージ─オデットからスワン夫人へ─」として公表した。考察の結果、この登場人物が絵画や花、水のイメージに重ねられることを示した。オデットのイメージは、ギュスターヴ・モローが描いた登場人物に重ねられるだけでなく、フロベールの小説のヒロインの描写からも形成されている。小説を通して、この登場人物をめぐる色彩とイメージが変容していくこと、この人物の描写が演出されていることを指摘した。 また、プルーストの作品におけるイメージ色彩について、新たな視点から分析をおこない、その成果が査読付き論文「プルーストの作品におけるイメージと色彩─鳥、魚、宝石のイメージ」として掲載された。具体的には、鳥や魚、宝石のイメージが『失われた時を求めて』に取り込まれる経緯を明らかにした。その際、プルーストの作品における描写をフロベールの作品のそれと比較した。フロベールの作品で現れる色彩とイメージがどのようにプルーストの作品に取り込まれ、また取り込まれたイメージが小説の主題といかなる関連を持つのか考察した。 本論では、まず、フロベールのテクストにおける鳥と魚のイメージがプルーストの作品に登場する人物の描写に取り込まれていることを示した。また、宝石とクジャクの羽根のイメージがフロベールのテクストでも、プルーストの小説でも現れることを指摘した。プルーストはフロベールと同様に、色彩を意識的に用いており、『聖アントワーヌ』におけるクジャクの色彩が、プルーストの小説において、主要なテーマとなる無意志的記憶に結びつけられる色となることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた出張や学会参加ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
生成過程をたどりながら、対象となる作品の分析を進めるため、文献調査をおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた出張や学会参加ができなかったため。 生成過程研究、文献学的研究のため資料収集をおこなう予定である。
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