研究課題/領域番号 |
17K02612
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
大野 斉子 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (00611956)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ロシア文学 / 表象文化論 / 民族アイデンティティ / ウクライナ / ゴーゴリ |
研究実績の概要 |
本年度は、研究資料の所蔵状況、収集・調査を主眼とした当該課題研究の足がかりとなる研究を行った。 春・夏季に、東京大学図書館、国会図書館等、都内で資料調査をおこない、ウクライナ文学、および18世紀から19世紀ロシア帝国の社会・歴史的事項の研究資料について文献の収集・検討と所蔵状況の把握を行った。 これを踏まえて8月、ロシアのサンクトペテルブルグに滞在し、ロシア国立図書館にて資料の集約的な調査・収集を行なった。19世紀の古書を含むウクライナ文学・民族運動に関する文献、ゴーゴリ研究文献、最新の研究論文およびスラブ語圏の比較文学・文化学に関する資料を入手し、秋季にはこれらの検討を行った。ウクライナ、ロシアの文学史双方におけるゴーゴリ文学の扱いについて論点を整理するとともに、ゴーゴリ文学における非ロシア的要素として、ロシア以西に波及したバロック期の文化の影響を取り上げ、作品内における特徴の検討を行った。 さらに2月には北海道大学図書館において資料調査を行い、当該研究において、交流の活発だったヨーロッパからスラブ語圏にまたがる文化圏の文学が重要な意義をもつことを見出した。 広域にわたる比較文学、特にバロック期以来の文学の展開の中にゴーゴリを位置付け、文化の交点として見出す視点を明確にした論考を3月に論文にまとめ、『SLAVISTIKA』(東京大学大学院人文社会系研究科スラヴ語スラヴ文学研究室発行論文集)に投稿した(掲載未定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外の資料収集を概ね予定通り行った。モスクワにおける資料収集は行わなかったが、実施した資料収集は現時点で十分な内容と情報量であり、ヨーロッパからスラブ語圏にまたがる比較文学史を当該研究に取り込む方法上の進展が得られた。本年度の研究成果は論文として取りまとめと執筆を行っており、発表は次年度にまたがり順次行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
前年の作業を足掛かりにゴーゴリ等の文学作品の構造分析と、ウクライナの17世紀以降19世紀後半の文学状況の調査を行う。ウクライナにおける資料収集を行い、ウクライナの文学史におけるゴーゴリの位置づけとウクライナ・ナショナリズム、ウクライナのバロック文化との関連を調査する。またこの成果を踏まえて、モスクワのロシア国立図書館等における所蔵調査・学術交流を行う予定である。 前年度からの調査結果と合わせ、新たに収集した資料を検討し、学会・学術誌に成果を発表し、専門家との意見交換を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度に予定されていた支出内訳のうち、旅費について支出額が少なかった。ロシア渡航の際の航空券を、予定を下回る価格で購入したこと、限られた期間の作業を効率化するため、データベースで所蔵を確認済みのペテルブルグの図書館資料の調査に労力を集約したことが理由である。
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