研究課題/領域番号 |
17K02615
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田邊 玲子 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (80188367)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ドイツ文学 / ヴィンケルマン / 人間学 / 身体 |
研究実績の概要 |
2020年度は、次項で述べるように、ほとんど研究のための時間がとれず、実績をあげられなかった。できたのは次にあげるいくつかの項目についての先行研究の確認・抜き書き作成と、一次資料としては同時代作家一人の小著の内容確認である。各項目については、読んだ先行研究の主なものをそれぞれ括弧に示す。1.十八世紀ドイツの人間学全般について(Muehlmann.: Geschichte der Anthropologie; Barkhoff u.a (Hg.): Anthropologie und Literatur um 1800; Garber u. a. (Hg.): Zwischen Empirisierung und Konstruktionsleistung: Anthropologie im 18. Jahrhundert; Pfotenhauer: Literarische Anthropologie. 2.十八世紀ドイツの「人間」概念をめぐる議論について。人間の在り方、人間と動物との境界存在としての猿をめぐる議論、人種をめぐる議論 (Hinske (Hg.): Die Bestimmung des Menschen. Pethes,: Anthropomorpha in Europa.; Herrmann: Ueber den Menschen als Kunstwerk; Borgards u.a. (Hg.): Monster. Zur Aesthetischen Verfassung eines Grenzbewohners. 3.ヘルダーのヴィンケルマン受容について Adler: Herder und die Deutsche Aufklaerung; Sauder (Hg.): Johann Gottfried Herder. 1744-1803. 一次資料としては、同時代の作家の「人間」観として、クリンガーのBetrachtungen und Gedanken ueber verschiedene Gegenstaende der Welt und der Litteratur に描かれる人間観の抽出作業ができただけである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度はコロナ感染対策のため授業がすべてオンラインとなり、学期中はオンライン授業関連技術の習熟、授業の資料作成、配信、フィードバック、学生のケア等に膨大な時間をとられ、全く研究の時間がとれなかった。学期休暇時も本務校委員会委員の業務による拘束が多く、さらに体調を崩したり、年度末の時期は停年退職にともなう研究室資料の整理や引っ越しに忙殺されるなどで、まとまった時間を研究にあてることができなかった。 細切れの時間に、かろうじて上に挙げたように主に先行研究の確認ができただけで、それらを関連づける余裕はなく、本来2020年度に遂行を予定していたまとめに向けての作業はできなかった。また、コロナ禍によりドイツにも行けず、最終的な資料収集もできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究の流れが昨年度一旦途切れてしまったために、 1.まず一昨年度までに積み重ねてきたことをもう一度見直して、まとめに向けての筋道を明確にする。2.ヴィンケルマンの『古代芸術史』における人間観の検討を進める。3.1.の結果との関連になるが、本研究で扱うことを予定していた人間論の諸観点 a. 感覚による感性・視覚の優越;b. 快楽/ 愉悦を語る言説 : Brockes (1680 - 1747): Irdisches Vergnuegen in GOTT; Johann Arnold Ebert (1723-1795): Das Vergnuegen. Eine Serenade (1743);アナクレオン派の詩人たち。c. ユートピア/高貴なる野生人 d. 理想的人間性醸成の条件 e. 動物としての人間と世界における優越存在としての人間観について、一次資料を検討する。4.可能であれば、年度末までに研究成果をまとめたいが、今までの進捗状況の遅れおよび、いったん途切れてしまったことを考慮すると、研究推進およびまとめに際して困難が予測される。できるだけ今年度中にまとめ上げたいが、遅くとも次年度の研究成果公開促進費申請に間に合うよう、まとめるようにしたい。 ドイツに行って最新の研究状況の調査と資料収集を行いたいと考えているが、今年度もコロナ感染の終息はおぼつかないことから、ドイツへの渡航は不可能かもしれない。九月頃までの様子を見て、最終的に本年度の予算執行の判断をしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によりドイツに行けず、旅費に考えていた予算が執行できなかったため。また、そもそも研究に充てる時間がほとんどとれず、図書注文のための文献調査をする余裕もなく、図書購入も僅かしかできなかったため。また、前年度から購入を考えていた比較的高額な図書が、古書でドイツのAmazonを通じてのみ購入可能であったが、ドイツのAmazon出店書店が日本への発送を行っておらず、購入できなかった。 本年度は図書の購入を推進するとともに、8項で書いたようにできるならばドイツに行って最新の研究状況の確認と文献調査を行いたいと思っているが、コロナの状況次第である。それに備え、別の可能性についても考えてゆきたい。
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