研究課題/領域番号 |
17K02616
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 耕太郎 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (40551932)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ドイツ文学 / 18世紀 / 自死 / こども |
研究実績の概要 |
2019年度も子どもの自死の問題についての研究をおこなった。これまで、自死(自死にいたる病気)というイメージが、若者に当てはめられるという証言を手がかりに、歴史的な史料とりわけ医学や教育に関連する言説を調査してきたが、そこであらためてわかってきたことは、自死(または自死にいたる病)というイメージが与えられる若者には、確かにその本人の身体や言動などに具体的な疾患のようなものが認められることもあるが、ある種のステレオタイプ、つまり若者は自死にいたる病を患いやすい存在である、というステレオタイプを押しつけているような言説が入り交じっていることである。 医学史研究において、例えば健康と不健康、または身体の正常と異常という線引きは、時代時代に応じて変化してきたことが指摘されているが、若者の自死という社会現象にも、おなじように、社会からのステレオタイプのあてはめという、若者をとりまく環境からのバイアスが、強くはたらいていたことをあらためて確認する必要があることが確認できた。こうした研究の進展から、若者をとりまく家庭や教育環境を見渡す必要性を感じ、本研究課題の前の研究課題をすすめていく際に知り合う機会を得た,神戸大学と大阪市立大学の研究者、さらにこの二人の研究者のつながりから、京都女子大と慶応大学の研究者と家庭という社会環境について定期的に意見を交換する機会を得ることができたことが、2019年度の研究の大きな成果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年9月の海外調査はハイデルベルク大学図書館でおこなった。同時に同大学で開催されたシンポジウムにも参加した。しかし2019年度末には研究会と別の国際学会の参加を予定していたが、どちらも中止となってしまった。2020年度に、これら学会が再び行われる可能性は低いので、口頭発表として準備してきた研究成果は、例えば論文のような別の媒体で公開する必要がある。このように研究会等が中止となる一方で、研究実績でも言及した日本の他大学の研究者とは、家庭という切り口からシンポジウムを日本独文学会の2020年度の全国研究大会にて開催するように準備をすすめることができた。2019年度中にシンポジウム開催の申請をおこない、2020年度中に開催することが確定している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、本研究課題の成果をまとめる1年となる。ただし、2019年度に公表する予定であった研究成果がまだ公表できていない。まずは2019年度の研究成果から、ひとつひとつ公表する予定である。また2018年度、2019年度と研究情報を交換することのできた、ベルギー・ゲント大学、ドイツ・コンスタンツ大学、ドイツ・ハイデルベルク大学の研究者とも連携をとり、本研究課題を発展させて、次の研究課題を構想する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度末に執行を予定していた出張費(飛行機チケット代)が余った。新型コロナウイルスの感染拡大状況にもよるが、本来開催予定であった学会が2020年度に開催されるのであれば、参加する予定である。また海外渡航が難しい場合は、研究報告をまとめる上で必要となる歴史的史料の取り寄せ(マイクロフィルム作成)を依頼する予定である。
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