本年は、本研究課題の最終年度であった。研究成果の公表として、本来はベルギー(ゲント大学)での学会発表を予定していたが、新型コロナウイルスの影響で、延期となったままであった。もうひとつは、日本独文学会での発表である。こちらは、オンラインでの開催であったが、発表し、多くの質問も受けた。また本研究発表をベースとして、数名の研究者と書籍化をすすめることになった。 本研究は、若者の自死の問題を、18世紀の書籍メディアのなかから確認するものであった。とはいえ、若者は、家庭や社会といった取り巻かれる環境の影響を大きくうけていることはいうまでもない。昨年度から、自死の言説の検討に加えて、若者をとりまく家庭環境についての考察の重要性を感じており、本年度も、若者を取り巻く家庭環境という視点をとりいれた研究を実施した。その研究の成果は、結婚したカップル間での呼称を手がかりに、両親の関係性の揺らぎというテーマで研究論文にまとめた。また若者そのものについては、若者の異常性として表象という観点から研究論文にまとめた。こちらの論文は、文化史における天才論の系譜とからめることでドイツ文学の研究にとどまらない論文になるようこころがけた。
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