本研究はチリの作家二人のスペイン語テクスト読解が主目的であったが、研究代表者は2019年9月にサンティアゴ市内の軍事政権下の様々な人権侵害の痕跡を回顧する「歴史遺構」と訪問し、サンティアゴ中央墓苑の犠牲者鎮魂碑に刻まれたスリータの詩を確認した。こうした作業を通して、チリのポスト軍政期における現実の鎮魂メカニズムと二人の作家の文学的創作プロセスとの関係性、類似点等を明らかにすることができた。実社会における記憶表象の形成に同時代の文学がどのような関係性を結ぶか、これはチリに留まらず、様々な天災、人災の「その後」を生きる人類に普遍の問題であるといえよう。
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