観念論と実在論の統合を目指したポスト・カント時代の批判哲学を、フリードリヒ・シュレーゲルというひとりの個性を通して検討することは、すなわち従来峻別されてきた哲学研究と文学研究のあいだの垣根を取り払う試みでもある。 近年、M. ガブリエルを中心とした新実在論が世界的に注目されているが、シェリング研究を思想的出発点としたこの潮流もまた、哲学と文学の有機的統合を基盤としているように思われる。 1800年前後のシュレーゲルにおけるポエジーと哲学の統合としての有機的なものの理念は、その意味においても、現代にいたってなおアクチュアリティを失っていない。
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