研究課題/領域番号 |
17K02622
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
小林 昭博 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (90434878)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | クィア / ホモソーシャリティ / セクシュアリティ / ジェンダー / 新約聖書 / ヨハネ福音書 / 社会史 |
研究実績の概要 |
ヨハネ福音書の歴史批評学的研究と社会史的研究およびクィア理論とホモソーシャリティ理論によるイエスとイエスが愛した弟子の関係性の読解を行った。 歴史批評学的研究としては、ヨハネ福音書の成立過程に関する研究を跡付け、この福音書は80~90年代にヨハネ学派が著し、その後に同学派による編集の手が加えられ、最終的には教会的編集者による大がかりな改変が施されて、2世紀初頭に現在のヨハネ福音書として成立したことを確認した。 社会史的研究としては、上述したヨハネ福音書の成立過程の背後にある歴史的・社会的状況を跡付け、2世紀初頭に教会的編集者が元来のヨハネ福音書に大がかりな改変を施した理由は、独自の活動を続けてきたヨハネ教団がセクト的な独自の活動を止め、ペトロに代表される正統主義教会に自らを組み込んでいく過程を表象するものであり、それまでの正統主義教会批判を止めて、正統主義教会と協調して歩んでいくことを内外に喧伝するためであったことを確認した。 クィア理論とホモソーシャリティ理論によるイエスとイエスが愛した弟子との関係性の読解については、ヨハネ福音書13章21-30節の「最後の晩餐」のテクストの読解を行い、歴史批評学、社会史、クィア理論およびホモソーシャリティ理論を援用して、イエスとイエスが愛した弟子との関係性を再読し、このふたりの男性の関係性をギリシャ・ローマ世界の哲学者の師弟愛に社会史的に位置づけて理解する試みをした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の研究で遅れていたユダヤ世界とギリシャ・ローマ世界の師弟愛と友愛に関する諸テクストの読解を行ったのだが、これは専門外の分野の研究に属するものであるゆえに、予定以上の時間と労力を使うことになった。それゆえ、今年度の課題の研究課題として予定していたイエスが愛した弟子が登場するテクストの読解については、一部のテクストの読解は終わったが、全てのテクストの読解を終えるには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、今年度の遅れを取り戻すべく、引き続き次年度にはヨハネ福音書におけるイエスが愛した弟子が登場するテクストの読解に努めたい。すなわち、この弟子が登場する19章16b-27節、20章1-10節、21章1-14節、20-23節、24節の読解を行い、イエスが愛した弟子がヨハネ福音書のクィアでホモソーシャルなエートスを象徴していることを明らかにしていくということである。 さらにペトロやマグダラのマリアといった主要な弟子たちとイエスとの関係を読み解き、男性弟子のペトロに関する描写と女性弟子のマグダラのマリアに関する描写を比較検討し、ヨハネ福音書の男性同士のホモソーシャリティとミソジニーとがコインの表と裏のように密接不可分に繋がっていることを明らかにすることを試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費(図書)の使用に関しては、入手に時間がかかった図書や品切れ等で入手できなかった図書があり、それらの情報が分かった時点では、すでに大学の図書購入期限が過ぎていたため、次年度使用額が生じた次第である。 今後の使用計画としては、未入荷の図書が間もなく納品される予定となっており、それらの商品の納入に伴い、予算の残金を確認したうえで、随時図書の購入をする計画である。
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