研究課題/領域番号 |
17K02622
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
小林 昭博 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (90434878)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | クィア / ホモソーシャリティ / セクシュアリティ / ジェンダー / 新約聖書 / ヨハネ福音書 / 社会史 / イエスが愛した弟子 |
研究実績の概要 |
今年度はクィア理論とホモソーシャリティ理論によるイエスとイエスが愛した弟子の関係性の読解を行った。特に、ヨハネ福音書13章21-30節の「最後の晩餐」のテクストを取り上げて詳細な読解を行い、その成果は「イエスの胸に横たわる弟子:クィア理論とホモソーシャリティ理論によるヨハネ福音書13章21-30節の読解」(日本新約学会編『イエスから初期キリスト教へ:新約思想とその展開』リトン、2019年9月、189-210頁)として上梓されている。この論文では最後の晩餐におけるイエスとイエスが愛した弟子との関係性をギリシャ哲学者の少年愛と師弟愛を社会史的モデルとして読み解き、イエスとイエスが愛した弟子の関係性がギリシャ哲学における真理の授与と少年愛における愛の授与と一体化しており、これこそがまさにクィア理論とホモソーシャリティ理論のモデルとして措定されるものとであることを詳らかにした。 口頭発表としては、日本基督教学会北海道支部公開シンポジウム「新しい日本語訳聖書を解剖する」(日時:2019年7月15日、会場:藤女子大学)において、「『聖書協会共同訳』のクィアな批評:教会・キリスト教主義大学・クィアな空間で読む」と題して、新しい聖書翻訳の問題をクィア理論を用いて批評した。また、日本基督教団北海教区石狩空知地区牧師会(日時:2019年10月7日、会場:酪農学園大学)において、「クィアに読む『聖書協会共同訳』と『新改訳2017』 :教会/クィアな空間で読む『聖書協会共同訳』と『新改訳2017』」と題して、学会での内容をキリスト教会の牧師の研修会用にアレンジした発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本事業の最終年度である2019年度はイエスが愛した弟子が登場するヨハネ福音書の全テクストの読解を終え、研究全体をまとめる予定であった。しかし、本研究の2年目に当たる2018年度から最終年度の2019年度の2年間にわたって、大学の役職(宗教主任)を兼任し、学内の会議の出席が増加し、また大学および学園(学校法人)全体の式典や行事等の担当も増え、さらには学外の会議や集会に大学や学園を代表して出席することになったために、科研費研究のエフォート率が当初の予定よりも下がってしまい、研究が「遅れている」事態となった次第です。 なお、すでに2020年2月7日付けで「科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長承認申請書」を提出し、一年間の補助事業期間の延長の承認をいただいていることを付言しておきます。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、現在の遅れを取り戻すべく、引き続き次年度にはヨハネ福音書におけるイエスが愛した弟子が登場するテクストの読解に努める。すなわち、クィア理論とホモソーシャリティ理論を用いてイエスが愛した弟子が登場するヨハネ福音書19章16b-27節、20章1-10節、21章1-14節、20-23節、24節の読解を行い、イエスとイエスが愛した弟子の関係性がギリシャ哲学者の少年愛と師弟愛の関係性を社会史的モデルとして描かれていることを明らかにする。そして、本研究のまとめとして、ヨハネ福音書のエートスがギリシャ哲学における真理の授与と少年愛における愛の授与を一体化したクィアでホモソーシャルなものであることを詳らかにすることを試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
すでに「現在までの進捗状況」において述べたように、本研究の2年目に当たる2018年度から最終年度の2019年度の2年間にわたって、大学の役職(宗教主任)を兼任しために、大学と学園(学校法人)の内外の業務が増加したために、科研費研究のエフォート率が当初の予定よりも下がってしまい、次年度使用額が生じてしまった次第です。 なお、すでに2020年2月7日付けで「科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長承認申請書」を提出し、一年間の補助事業期間の延長の承認をいただいていることを付言しておきます。 また、使用計画としては、延長期間である2020年度に2019年度に購入できなかった図書の物品費に充てて使用する計画です。当初の計画では、学会出席や研究のための旅費として使用する経費も計上されていましたが、現在の新型コロナウイルスの感染拡大防止を考えると、この経費の拠出は難しいとの予想をしています。ただし、年度内に事態が収束(終息)した場合には、時期を見極めつつ学会や旅費等の支出を改めて検討するつもりです。
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