研究課題/領域番号 |
17K02622
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
小林 昭博 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (90434878)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クィア / ホモソーシャリティ / セクシュアリティ / ジェンダー / 新約聖書 / ヨハネ福音書 / 社会史 / イエスが愛した弟子 |
研究実績の概要 |
今年度(2020年度)は本研究課題の一環として、「『聖書協会共同訳』のクィアな批評:教会・キリスト教主義大学・クィアな空間で読む」と題する論考を『聖書 聖書協会新共同訳をめぐるシンポジウム(仮題)』(日本基督教学会北海道支部(全10頁程度[入稿原稿A4版6頁])に発表するために、2020年5月24日に入稿した。本研究は前年度(2019年度)に同学会のシンポジウム「新しい日本語訳聖書を解剖する」(日時:2019年7月15日、会場:藤女子大学)の場で口頭発表した内容をまとめたものであり、新しい聖書翻訳である『聖書 聖書協会共同訳』(日本聖書協会、2018年)ならびに『聖書 新改訳2017』(新日本聖書刊行会、2017年)を取り上げ、クィア理論を用いてその内容を批評したものである。特に、新約聖書の同性間性交にまつわる諸テクストの翻訳を従来の翻訳である『聖書 口語訳』(日本聖書協会、1954年、1955年)と比較参照することによって、本研究の枢要な方法論であるクィア理論が新約聖書の読解に新たな地平を開く可能性を持っていることを詳らかにし、そのことを通して「クィア理論とホモソーシャリティ理論によるヨハネ福音書の読解」という本研究が有する学問的意義を明らかにしたと言い得るのである。 なお、このシンポジウム誌は2020年度内に発行予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、編集者と印刷所の作業が遅延している状況が続いており、現時点では未発行となっている。ただし、このシンポジウム誌は2021年度には発行される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は本研究の最終年度だったが、新型コロナウイルス感染拡大防止対策のために出張が一切できず、また遠隔授業の対応に追われ、さらに大学の役職者(宗教主任)として新型コロナウイルス感染防止対策に関わる職務が激増したため、科研費研究を含めた研究にほとんど従事することが叶わず、研究の進捗状況が「遅れている」事態になったしだいである。 なお、2021年2月3日付けで「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う研究期間の再延長承認申請書」を提出し、2021年3月19日付けで1年間の研究期間の延長を承認いただいていることを感謝とともに記しておく。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方法としては、現在の遅れを取り戻すべく、次年度(2021年度)にはヨハネ福音書におけるイエスが愛した弟子が登場するテクストの読解を進めていく。すなわち、クィア理論とホモソーシャリティ理論を用いてイエスが愛した弟子が登場するテクスト(ヨハネ福音書19章16b-27節、20章1-10節、21章1-14節、20-23節、24節)の読解を行い、両者の関係性がギリシャ哲学者の少年愛と師弟愛の関係性を社会史的モデルとして描かれていることを明らかにすることに努めるということである。そして、本研究のまとめとして、ヨハネ福音書のエートスがギリシャ哲学における真理の授与と少年愛における愛の授与を一体化したクィアでホモソーシャルなものであることを詳らかにすることを試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
すでに「現在までの進捗状況」において述べたように、今年度(2020年度)は新型コロナウイルス感染拡大防止対策のために一切出張することができず、また遠隔授業に伴う授業対応に追われ、さらに大学の役職者(宗教主任)として新型コロナウイルス感染防止対策に関わる職務が激増したため、科研費研究を含めた研究にほとんど従事することができなかったために、次年度支出が生じたしだいである。 なお、2021年2月3日付けで「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う研究期間の再延長承認申請書」を提出し、2021年3月19日付けで1年間の研究期間の延長を承認いただいていることを改めて記しておく。 また、使用計画としては、図書の物品費に充てる計画である。当初の計画では、学会出席や研究のための旅費として使用する経費も計上していたが、新型コロナウイルスの感染拡大の現状を考えると、旅費に係る経費の拠出は難しいとの予想をしている。もっとも、次年度(2021年度)内に事態が収束(終息)した場合には、時期を見極めつつ学会や旅費等の支出を改めて検討したい。
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