研究課題/領域番号 |
17K02622
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
小林 昭博 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (90434878)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | クィア / ホモソーシャリティ / セクシュアリティ / ジェンダー / 新約聖書 / ヨハネ福音書 / 社会史 / イエスが愛した弟子 |
研究実績の概要 |
2021年度は本研究課題の一環として、(1)単著論文「『見よ、彼は彼をどれほど愛していたことか』:クィア理論とホモソーシャリティ理論によるヨハネ11:1-44の読解 」、(2)単著論文「クィアな聖家族:ルカ降誕物語のクィアな読解」を執筆し、(3)学会の招待講演「同性愛と新約聖書:セクシュアリティの観点からジェンダーの観点へ」 を行った。(1)はヨハネ福音書11章1-44節の「ラザロの復活」を取り上げ、この物語の背後に隠されているイエスとラザロという師弟の間のホモソーシャルでホモエロティックな関係性を論じた。(2)はルカ福音書1-2章のイエス降誕物語をクィア理論を用いて再読し、西洋世界が長く大切にしてきた「聖家族」が実は「クィアな家族」にほかならないということを論じた。(3)は新約聖書の同性間性交(同性愛)に関係するテクストを取り上げ、最近のクィア理論の知見を活かして、セクシュアリティの観点からではなく、ジェンダーの観点から新約聖書の同性間性交(同性愛)のテクストを再読する必要があることを論じた。 また、本研究課題に関連する研究として、単著『同性愛と新約聖書:古代地中海世界の性文化と性の権力構造』を上梓した。本書は総頁数が501頁になる大部なものだが、本研究課題の前提となる博士論文『同性愛と新約聖書:セックス・ジェンダー・権力構造』(関西学院大学、2008年2月27日受理)の増補改訂版でもある学術書であり、同性愛に関係すると見なされてきた旧約聖書と新約聖書のテクストの読解を通して、同性愛を断罪してきたキリスト教の問題性を詳らかにする研究として漸く日の目を見たものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021度は新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、研究期間を再延長していただいていたが、新型コロナウイルス感染拡大防止対策のために今年度も出張が一切できず、また遠隔授業の対応や大学の役職者 (宗教主任)として新型コロナウイルス感染防止対策に関わる職務の増加が続いたため、科研費研究の総まとめにする予定であった単著の出版をすることが叶わず、研究の進捗状況 が「遅れている」事態になったしだいである。 なお、2022年2月7日付けで「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う研究期間の再延長承認申請書」を提出し、2022年3月15日付けで1年間の研究期間の延長を承認いただいていることを感謝とともに記しておく。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度も新型コロナウイルス感染防止対策のため、出張等が自由に行えない状況が続くことが予想されるゆえに、資料の整っている大学等に赴いて本研究課題に取り組みことが難しい状況にあるが、新たに科研費を出版助成に用いることが可能になったことをポジティブに受け止め、本研究の総まとめとして計画している単著の出版を進めていく予定である。まずは、これまで執筆してきた論文を精査しつつ修正し、さらにクィア理論とホモソーシャリティ理論を用いたヨハネ福音書の読解を進めていくことで、2022年度の研究の完成を目指すものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
先に「現在までの進捗状況」において述べたように、2021年度は新型コロナウイルス感染拡大防止対策のために一切出張することができず、また遠隔授業に伴う授業対応と大学の役職者(宗教主任)として新型コロナウイルス感染防止対策に関わる職務の増加が続いたため、科研費研究の総まとめてとして計画していた単著の出版をすることができず、次年度支出が生じたしだいである。 なお、2022年2月7日付けで「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う研究期間の再延長承認申請書」を提出し、2022年3月15日付けで1年間の研究期間の延長を承認いただいていることを改めて記しておく。 また、使用計画としては、科研費を出版助成に用いることが可能になったとを受け、直接経費を出版の費用に充てて使用したいと考えている。
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