研究課題/領域番号 |
17K02626
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
福間 具子 明治大学, 文学部, 専任教授 (50376521)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ショアー / 第二世代 / 戦後文学 / 想起の文化 / オーストリア / ドイツ / ローベルト・シンデル |
研究実績の概要 |
2020年度は、当初の計画では本研究の最終年度に当たることから、2019年度のオーストリア滞在時の研究成果も合わせつつ、情報の体系化、総合的分析を行う予定であった。また、きめ細かい総括のためにドイツ・オーストリアへ渡航し最後の調査を行うことを計画していた。 しかし、新型コロナウィルスの感染拡大が世界的にとどまることがなかったため、渡航自体が不可能となり、国内外のシンポジウムも中止あるいは延期という状況となり、計画を変更せざるを得なかった。オンライン授業の準備等で大幅に研究時間が削られるなか、可能な研究として、作品読解、分析を進めることと、特に2019年度の作家とのインタビューや現地調査に直結する考察を執筆することに注力した。 具体的には、<第二世代>を代表する作家であるローベルト・シンデルと、映画監督であるルート・ベッカーマンについて、彼らがショアーの記憶を重層的、連続的時間感覚でとらえている点を指摘し、それが象徴的に表れる詩作や映像作品を分析したものをシンポジウムにおいて発表した。また、当初想定していなかったが、<第二世代>の作家たちがいわゆる<想起の文化>と対峙し、そこに具象化される集合的記憶に対し個人の記憶を対置させた作品を生み出している点に注目し、それらについての考察を行っている。 昨年度から大きく関心を寄せている現象は、ショアーを生き延びた人々が相次いで世を去る「証人の終焉」が進み、<第二世代>が世代交代に対し何らかの回答をしようとしている点である。研究当初はまだ<第二世代>の出現の方に関心が向いていたが、彼らが<第一世代>の消滅に対して起こすアクションからは、この文学的現象が新しい段階に入ったことが示されている。この点を最終的研究報告に含むことが可能となりつつあることは、大きな意義であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの世界的感染拡大により、ドイツ、オーストリアに渡航することが出来なくなり、現地での資料調査、インタビュー、ワークショップが実施不可能となってしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長し、2021年度のドイツ・オーストリア渡航を計画しているが、現時点では夏期に短期間渡航できる状況ではないように思われる。そのため、その場合を考慮に入れ、オンラインでの資料閲覧、インタビューなどに比重を移しながら、最終的な体系化に向け、資料分析(作品、書評、舞台化資料等)を進めてゆきたい。 とりわけ、<想起の文化>と作品を関連付ける点と、「証人の終焉」と直接かかわる現象に詳細な目配りを行う点に力を入れて、研究全体の総括を進めてゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの世界的感染拡大により、当初計画していたドイツ・オーストリアへの渡航が出来なくなったため、旅費が使用されなかった。
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