研究課題
研究の三年目はヤーコプ・モヴィヨンの研究に重点を置いた。ロストック大学図書館、ヴォルフェンビュッテル市アウグスタ図書館、ニーダーザクセン州立文書館、ゴータの研究図書館など、ドイツのアーカイブでの資料調査に重点をおいた。とりわけヴォルフェンビュッテル市アウグスタ図書館では、膨大な量のモヴィヨンの書簡をトランススクリプトでき、18世紀の雑誌文化に寄与した彼の活動の実態を解明することができた。さらにD・ヒューニングとG・シュティーニングとともに2019年8月にはフリッツ・テュッセン財団の支援を受けて国際学会「ヤーコプ・モヴィヨンとドイツのラジカル啓蒙主義」を主催した。私の講演ではモヴィヨンの編集者としての活動を詳細に取り上げ、彼の文学批評を紹介することに努めた。学会の記録論集は2021年に私の編纂によってde Gruyter 出版社の「Werkprofile」で公刊される予定である。さらに私はオックスフォード大学の独文学者K・ヒリアードと一緒にモヴィヨンの全書簡の出版プロジェクトを紹介した。モヴィヨンの往復書簡、これはFr・ニコライ、J・J・ボドマー、R・E・ラスペ、L・Fr・G・ゲッキンクとL・ウンツァーなどの詩人、作家、出版者および国家学者ミラボーらと交わされたものだが、これはとりわけいわゆるラジカルな啓蒙主義の研究にとってきわめて重要である。また 『最新ドイツ文学精選叢書』に掲載された様々な寄稿の手稿メモは特に価値の深いものであることが明らかになった。というのもそれらから共同執筆者についてのさらなる情報が得られ、雑誌の新しい匿名の寄稿者たちの何人かの実名を突き止められたからだ。ゴータの研究図書館でわたしは 『最新ドイツ文学精選叢書』についての研究を継続することができ、研究対象の雑誌の寄稿者たちの作品集を出版する計画を実行するための準備を進められた。
2: おおむね順調に進展している
研究の3年目に私は『レッシング年鑑』や『ドイツ文学の社会史の国際アーカイブ』など著名な学術雑誌にいくつかの査読付き論文を発表した。学術専門誌『18世紀研究』には、私が 『最新ドイツ文学精選叢書』に出たモヴィヨンの宣伝と彼の手紙の一通に示唆されている情報を元にハインリヒ・フリードリヒ・ディーツの行方不明になっていた論文を発見し、それを紹介した。学術専門誌『文化哲学のための雑誌』には、ルートヴィヒ・アウグスト・ウンザーの『懐疑者のための遺書』に関する論文を寄せた。これも同様に消息不明となっていたもので、私は残存する唯一の原稿をコペンハーゲンで見つけることができた。これらの論文は、私が数年間にわたる研究の最終年に当たる次年度に発表しようと計画しているより包括的な研究書のための前提をなすものである。以上の点から本研究課題は順調に進捗している判断できる。
今年度もドイツ語圏の図書館にて資料の収集に当たりつつ、収集した資料の査定に当たる。2020年4月から6月はアーカイブ資料の査定をすすめるとともに、国内外の専門誌への投稿の準備を行う。7月から8月にはベルリンに4週間ほど程度出張して、ベルリン国立図書館のアーカイブで資料調査を行うとともに、『何人かのドイツ詩人の価値について』のエディションを完結させる。さらに「ラジカル啓蒙家ヤーコプ・モヴィヨン」に関する学会記録論集をドイツの出版社から発行する。ベルリン滞在期間中には、「Werkprofile」シリーズの共同編纂者たちとの打ち合わせを行う。2020年9月から11月にかけては、ディーツとモヴィヨンについての書簡集の編纂作業を行う。アーカイブ資料のトランススクリプトと査定を進める。さらに雑誌のさらなる投稿者たちについての学術論文を複数執筆して投稿する。2020年12月から2021年3月にかけては、単著『美的自由思想家たち』を執筆して完成させる。それとともに、ディーツの往復書簡とモヴィヨンの往復書簡の出版の準備に当たる。世界的なコロナ禍のなか出張計画の実現は予断を許さないが、著書の出版のために不可欠な調査なので、環境が整い次第、実行するつもりである。
最終年度に海外出張日数を延長するため。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件)
Internationales Archiv fuer Sozialgeschichte der deutschen Literatur (IASL)
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