研究課題/領域番号 |
17K02627
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
クラヴィッター アルネ 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90444778)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ドイツ文学 / 啓蒙主義 / 雑誌文化 / 書評 / 学術ジャーナル / 出版制度 |
研究実績の概要 |
研究の4年目は、第一の力点として、本来アーカイブでの研究調査が中心となるはずだった。しかし、COVID19-流行病のために極めて限定的にしか、この計画は実現できなかった。それでも2020年6月と7月にはベルリン国立図書館で二ヶ月間研究調査する許可を得られ、100年前に『最新ドイツ文学精選叢書』の包括的な研究をした司書ヴォルフラム・ズーヒィアーの遺稿を調査することができた。さらにH.Fr.ディーツの著作物ならびに彼に関する二次資料、私的往復書簡、プロイセンの省庁との外交往復書簡を閲覧することができた。そうしてディーツと外務省の担当外交官Ch.K.W.フォン・ドームの暗号化された機密書簡の解読にも約80%成功した。 第二の力点は、「何人かのドイツ詩人の価値について」という二巻本の文学批評の注釈付きの校訂本と『ヤーコプ・モビョンとドイツのラジカル啓蒙』の学会記念論集を編集・出版することにあった。両書とも2021年秋に私の編集責任でde Gruyter 社の「作品プロフィール」シリーズの枠組で出版される。さらに『最新ドイツ文学精選叢書』のさまざまな寄稿者についてさまざまな権威ある専門誌に論文を投稿し、いずれも採用されて現在印刷中である。上記記念論集に寄せたモヴィヨン論のほか、ウンザーについては雑誌『18世紀』、ヒスマンについては別の学会記念論集、「何人かのドイツ詩人の価値について」は雑誌『ダフニス』に掲載されることが決まっている。 この研究プロジェクトからは新しい研究計画が生まれた。ベルリン国立図書館のオリエント部門長と共同で、哲学者・外交官・東洋学者H.Fr.ディーツの往復書簡の包括的な校訂を進めている。オックスフォードの独文学者ケヴィン・ヒラードと、ヤーコプ・モヴィヨンの全書簡の出版プロジェクトに着手しはじめた。これには数年を要する見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の4年目の中心となるはずだったアーカイブでの調査は、滞在するドイツでCOVID19-流行病によるロックダウンのために図書館や資料館がことごとく閉館したために、極めて限定的にしか、達成できなかった。それでも2020年6月7月のベルリン国立図書館滞在によって、制約のあるなかでも、なんとか最低限の研究調査はなし得たし、研究成果のアウトプットについては想定以上にできたから。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に計画していたベルリン国立図書館での研究調査はコロナ感染拡大により思惑通りに進まず、一部は先送りするほかなかった。この調査は H.Fr. ディーツとJ.モヴィヨン、それぞれの書簡集の編纂作業にとって不可欠である。アーカイブでの調査が終われば、ディーツ書簡集を編纂し、詳細な注をつけて出版するつもりである。 同時に、モヴィヨンとウンザーの共同プロジェクトである二巻本の文芸評論集『何人かのドイツ語詩人の価値について』の編纂にあたる。この編著の詳細な後書きでは、今日忘れ去られたものの、ゲーテによって新しい批評の「酵素」と呼ばれたスキャンダルな論集の文学史的な意味を明らかにするつもりである。 今年度は1770年代の文芸批評に徹底的に取り組む学術論文を何本か投稿し、本プロジェクトの成果を世に問うつもりである。そして私が研究した文芸誌が教育的であるとともに、統合的な機能を持っていたことを示し、18世紀末の文芸誌が若い世代の作家にとって、新しい文学理解の代弁者となったことを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大により、旅費などを先伸ばすしかなかったため。
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