フィロン研究は古代哲学研究の一環として行われる場合が多く、聖書学において援用される文献学的分析は行われて来なかった。本研究はフィロンの著作に対して語学的・釈義的分析の手法を適用することによってフィロンの倫理思想の特色を明らかにして、フィロン研究における新局面を切り拓いた。 フィロンは古代のユダヤ人哲学者であり、その思想はユダヤ的要素とヘレニズム的要素の両方を併せ持っている。本研究によって、フィロンの思想的営みが旧約・ユダヤ教の伝統をギリシア哲学の諸概念によって再解釈し、ユダヤ教が普遍妥当性を持つことを示す弁証的意図を持っていたことが明らかになったのは、フィロン研究に対する新しい貢献である。
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