研究課題/領域番号 |
17K02632
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
熊谷 哲哉 近畿大学, 経営学部, 講師 (20567797)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心霊主義 / カール・デュ・プレル / シュレンク=ノッツィング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ドイツの心霊主義者カール・デュ・プレルおよびシュレンク=ノッツィングを中心に、19世紀末から20世紀初頭にかけて、夢遊状態と二重人格(自我の分裂)についてどのような言説が展開されたのかを探ることである。平成29年度は、研究計画の通り、8月に資料収集のため、ミュンヒェンのバイエルン州立図書館およびウィーンのオーストリア国立図書館にて、調査を行った。その結果、これまで注目してこなかった、デュ・プレルの著作や関連する心霊主義者たちによる著作等を閲覧することができた。この調査の結果は、30年度以降の論文作成に役立てたい。 また、5月には、以前研究発表で取り上げた、クリスティーネ・ヴニケの小説『狐と島邨博士』(2015年)に描かれた、日本人精神科医島邨俊一と、1890年代ドイツ・オーストリアにおける精神病と憑依現象についての言説を関連づけて論文を発表した。(「記憶と病ークリスティーネ・ヴニケの『狐と島邨博士』について」『希土』第42号pp. 94-110、2017年7月) 8月には、研究分担者として参加している「プラハとダブリン」研究会(代表者:川島隆京都大学准教授)にて、カール・デュ・プレルとシュレンク=ノッツィングの著作における、夢遊病と心霊主義の関係について発表した。この発表では、古くから研究の対象となっていた夢遊状態が、どうして19世紀末に心霊主義の言説と結びつくのかという問題について考察し、デュ・プレルとシュレンク=ノッツィングの心霊研究の意義をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでにデュ・プレルとシュレンク=ノッツィングの代表的な著作は収集できており、また、関連する文献等もデータベース等である程度集められるようになっていたため、すみやかに研究を始めることができた。8月には研究調査を行い、予定通り、これまで読むことがなかった、重要な文献を発見することもできた。8月に行った研究会での発表では、心霊主義と夢遊病の関係について、概論的に整理するだけに留まってしまったが、今後どのように論文として展開していくべきかといった点について、他の参加者との議論から、今後の課題を見いだすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、昨年度の調査で得られた資料を使って、カール・デュ・プレルの哲学的な心霊主義研究において、どのように夢遊病が理解されていたのかを探求する。30年度前期は論文の準備を進め、8月にはふたたびミュンヒェンに赴き、資料調査を行う。本年度後期は、カール・デュ・プレルについての論文を執筆する。平成31年度は、当初の計画通り、心霊主義における二重人格の問題について考察し、日本独文学会で口頭発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画的に予算を使用したが、最後にわずかな金額のみ余ってしまった。次年度の予算に繰り入れ、物品費等に充てたい。
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