本研究は、春秋戦国時代を舞台とする通俗文学作品を対象に行ったものである。 まず、明代戯曲の『趙氏孤児記』に関する研究である。本作品は、春秋時代の晋国で起きた趙氏一家惨殺からその復讐まで描いている。本作品には五種の版本が現存し、それらの継承関係について従来の説を改めることができた。次に中国戯曲に登場する女性像について、脇役という視点から明らかにすることを試みた。事例に引用した脇役の女性は、先の『趙氏孤児記』はじめ複数の戯曲から取り上げた。最後に、作品の特色を詳細に分析するための基礎的な作業として、脈望館抄本「楚昭公」雑劇の訳注作成を行った。
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