本研究は、20世紀中国の代表的な古典学者にして作家の銭鍾書(1910-1998)による詩論『談芸録』とその自筆ノート『容安館札記』の知見を手がかりとして、中国古典詩学、ことに宋詩研究への新たなアプローチを試みたものである。基礎作業として、隔月に1回、研究会を開催して『談芸録』の会読を進め、第43条「施北研遺山詩註」までの詳細な訳注を完成させた。また、第2条「黄山谷詩補註」の内容を検討する過程で、黄庭堅の詩と任淵の注釈、さらに日本の五山僧万里集九の抄物『帳中香』にも関心の対象を拡げ、室町時代における黄庭堅の詩集の流伝と閲読に関する論文を発表した。
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