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2018 年度 実施状況報告書

近代中国の知識人群像 ―日中15年戦争期の民国教科書編纂事業と三人の作家について

研究課題

研究課題/領域番号 17K02641
研究機関大阪大学

研究代表者

今泉 秀人  大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 准教授 (00263343)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード中華民国 / 国語教科書 / 作家 / 文学創作 / 教育制度 / 交友関係 / 文学制度 / 新文学
研究実績の概要

日本・海外における調査に関しては、台湾において比較的多くの関連書籍を購入でき、また2018年12月27日から31日まで、文献収集および調査を行うことができた。
本研究の成果報告については、2018年6月10日に日本大学で開かれた、日本比較文学会第80回全国大会で企画された「シンポジウム 〈地方〉というレトリックの〈あと〉」において、研究報告「“郷土文学”の来し方行く末 現代中国文学の立場から」と題して、中国におけるいわゆる「新文学」の黎明期から重要な文学テーマとされてきた「郷土文学」の、21世紀の現在に至るおおまかな流れを背景にして、その流れの中心に位置する作家として沈従文を取り上げ、特に彼に影響を与えた周作人、そして1940年代に昆明の西南聨合大学で沈従文に出会い、その後文学活動を始めた汪曾祺との関係について報告した。
さらに、2018年12月29日に台湾の長榮大学で開かれた「台南研究集会」において、研究報告「沈従文の“ミャオ族幻想”について」を行った。この報告は、沈従文文学を貫く中心的テーマであった、少数民族ミャオ族の形象が、いかにして沈従文の作品の中に芽生え、いつごろどのような形で展開し、完成され、消えていったのか、ということを、具体的な作品を例に挙げ述べたものである。この問題において、本研究の1930年代から1940年代にいたる小学国語教科書編纂時期の人間関係がいかなる影響を持ったのかということについては詳述できなかったが、現在までに判明した事実関係をごく簡単に紹介し、ひとつの仮説として、沈従文の社会的地位とその変化に伴う意識の変化が作品の傾向に及ぼしたであろう点について指摘した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初は、最初の年に青島、次の年に重慶その他へ赴く、という計画であったが、協力関係に基づいて調査をともにしている「青島文芸研究会」(代表:齊藤大紀)および「重慶研究会」(代表:中野知洋)の現地調査に合わせて、最初の年に青島、重慶と二つの場所に出張して、調査と研究交流をすることになったため、予算を一部初年度に前倒しして研究を行うことができた。よって、今年度は重慶に行かず、現地調査は行わなかった。
また予定していた中華人民共和国の湘西地方における調査と、中華人民共和国湖南省吉首市で行われる予定の国際学会、「国際沈従文学術研究論壇」において、本研究の中心となる教科書編纂事業と作家との関係に関してこれまで行ってきた調査・分析・考察について報告を行う予定であったが、主催者側の都合により学会が開催されず報告もできなかった。
作家らの事跡に関する資料収集と整理および分析に関しては、順調に進んだが、国語教科書の内容に関する分析については停滞していると言わざるを得ない。ただ、呉洪成・田謐・李晨等『中国現代教科書史論』(知識産権出版社、2017)を入手できたことによって、ある程度の方向性が得られたのではないかと思っている。

今後の研究の推進方策

2019年度(最終年度)は、中華人民共和国の湘西地方における調査を中心として、その他に台湾で国立編訳館資料を所蔵する台湾国家教育研究院図書館(台北市)を訪れ資料の収集および実地調査、そして研究交流をする予定である。
また、2019年4月27日に予定されている日本比較文学会関西部会例会におけるシンポジウム「移民・植民地・亡命の比較文学 二十世紀以降の文学が生まれた条件」で本研究の研究成果の一部を報告し、6月16日に予定されている日本比較文学会全国大会において、本研究の研究成果報告として、「中国語が若かった頃 沈従文と鍾理和」と題した報告を行う予定である。
本研究の研究成果を発表する論文としては、2020年3月刊行予定の大学紀要に「北京のボヘミアン 沈従文の修行時代」と題した論考を投稿する準備をしている。本研究で扱う国語教科書編纂事業の前提となる人間関係が1920年代の北京ですでに萌芽しており、それが後の沈従文の社会上昇に結びつく前提となっていたことを実証するものである。
本研究の全体像に関しては、すでに散発的に発表しているいくつかの論文を何らかの形でまとめて中国語であらためて発表したいと考え準備している。今年度中に学術雑誌に投稿する予定である。

次年度使用額が生じた理由

物品費として使用する予定であったものが入手できずに次年度使用額が生じました。今年度は入手できる見込みです。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] “郷土文学”の来し方行く末 現代中国文学の立場から2018

    • 著者名/発表者名
      今泉秀人
    • 学会等名
      日本比較文学会第80回全国大会
  • [学会発表] 沈従文の“ミャオ族幻想”について2018

    • 著者名/発表者名
      今泉秀人
    • 学会等名
      台南研究集会

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公開日: 2019-12-27  

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