研究課題/領域番号 |
17K02642
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
中野 知洋 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (70372638)
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研究分担者 |
高橋 俊 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 教授 (10380297)
中野 徹 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (20610512)
中村 みどり 神奈川大学, 外国語学部, 准教授 (30434351)
杉村 安幾子 金沢大学, 国際基幹教育院, 准教授 (50334793)
齊藤 大紀 富山大学, 人文学部, 教授 (70361938)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 重慶 / 中国国民党 / 民族主義文学 / 王平陵 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、上海図書館、および重慶図書館等の機関を中心に資料調査を実施した。例えば研究代表者が重慶図書館で収集した、王平陵『女優之死』(現実出版社、1943)、『新亭涙』(青年軍出版社、1946)という単行本のコピーは、王の民族主義文学における新たな側面を知ることができる重要な成果である。また今回、同じ王の『小飛行師』(建国書店、児童文芸叢書、1945)、『怎様読歴史』(文風書局、新少年文庫、1944)という児童文芸の作品もコピーの入手がかなった。これは、これまで主に歴史小説、演劇(戯曲)というジャンルに特色があると見られた王の民族主義文学が、児童文学と教育という方面においても展開したことを示す資料である。さらに上海図書館で収集した王の「婦女夜」(『女青年月刊』第2巻第1期、1945)等は、王平陵文学におけるロマン主義的性格の究明という本研究の課題を補強する資料である。 上記の調査は平成30年3月に行った。調査の前半には、科研メンバーと、国民政府の臨時首都が置かれた日中戦争時期重慶の遺構も見学した。白公館、桂園、中国民主党派歴史陳列館等といったものである。重慶北郊の北碚区では、梁実秋紀念館(雅舎)、四世同堂紀念館(老舎旧居)、呉mi旧居陳列室(呉mi旧居)等を見学した。とくに呉mi旧居は写真パネル等の展示資料が豊富で、日中戦争時期の呉miが国立長沙臨時大学から西南聯合大学に到り、戦後も西南師範学院に止まり、1960年に北碚に移住するその経過と、それぞれの時期に刊行された業績とを時系列に沿って展示したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究例会は基盤研究(C)15K02431と合同で開催した。また「研究実績の概要」に示したとおり、平成30年3月に科研メンバーによる現地視察を行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者が重慶図書館で入手した王平陵『晩風夕陽裏』(1944)は、重慶における宣伝部直属の出版機関である国民図書出版社から刊行された戯曲集である。王には国民図書出版社から刊行された作品集が複数ある。今後も、王平陵、沈従文等といった知識人と日中戦争時期出版活動状況の調査を継続する。 その他のメンバーも、引き続き、張恨水、凌叔華、無名氏や徐xuという個別の知識人研究、七月社という文学結社の活動、出版社の通俗読物編刊社の重慶移転後の活動、また重慶の『新民族』周刊、『文化先鋒』といった刊行物の展開を中心とする重慶と周辺の諸都市とを結ぶ抗日文芸戦線ネットワークなど、個別の課題研究を継続する。 第2年以降も順次研究成果が公刊される見込みであり、そうした全体を通じて、重慶を中心とした周辺諸都市における文化活動の実態と都市間ネットワークを解明し、日中戦争時期の中国内陸部における民族論壇の形成と展開を俯瞰することが可能になると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地視察調査の日程が年度末にずれ込んだため、本務校のある研究分担者が入試日程等の校務と重なり、参加できなくなったためである。ただ、資料収集及び課題に即した研究は順調に進んでおり、平成31年度に追加の実地調査を行うなど、適切に執行する。
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