研究課題
基盤研究(C)
現在中国において「童話」という用語は子どものために書かれた創作的な物語を指す用語として用いられているが、この童話という用語は、20世紀初頭に日本語から借用されたものとされている。本研究においては、清末民初の頃の中国の子どものための雑誌を検証し、初期の中国児童文学における日本の影響について,「童話」と言う用語の受容と成立に注目しながら検証し、明治期においては巌谷小波のお伽噺が、大正期においては小川未明の童話が初期の中国児童文学において与えた影響が非常に大きいことを明らかにした。
日中比較児童文学
本研究を通じてまず明らかになったことは、日中両国における児童文学の最初の接触が、清末民初であるということである。中でも『蒙学報』に紹介された巌谷小波のお伽噺について発見したことは、日本と中国の児童文学史を鑑みる上で、非常に大きな意義があったと言える。この件は日中両国においてこれまで指摘されたことが無く、児童文学史の見直しにつながるものであると言える。また、民国期の童話に関しては、小川未明の童話を中心に、「童話」という文芸が、同時代の日本・中国・韓国において広く発展していたということを考察することができた。このことは、東アジア児童文学史を考える基盤となった。