科挙は、家柄に由らず、広く人々に出世の機会を保証する官吏登用制度であったが、極めて大きな心理的負担を受験者及びその家族に要求した。本研究は、『夷堅志』などの宋代の物語文学を検討することで、当時の人々が科挙の心理的圧力を未来を開示する夢占いに依拠して解消しようとしたことを明らかにし、さらに、『夷堅志』という架空の小説文芸として扱われている作品群が、当時の人々の集合的な心理を反映するものとして分析可能であることを明らかにした。さらに進んで、唐代における科挙落第をテーマとした詩歌の分析によって、唐代の人々が落第という挫折体験を心理的にどのように慰撫、解決しようとしたのかを明らかにした。
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