本研究は、周氏兄弟(魯迅と周作人)と雑誌『新青年』グループとの関係を新資料で検証し、五四時期に文学的出発を遂げた周氏兄弟の原点解明を目的とするものである。 初年度2017年度は、長堀祐造を中心として『陳独秀文集』(東洋文庫、全3巻、2016~17年)の翻訳を完遂し、10月には「東アジア中文文学国際学術シンポジウム」で陳独秀セッションを開催した。小川利康は北京中国現代文学館に出張、周作人宛の故安藤更生(早大教授)書簡を閲覧・撮影し、資料収集に努めた。 2年目2018年度は早稲田大学で「第1回周作人国際学術シンポジウム」(7月7日、8日)を開催した。内外より研究者26名が参加する大規模なものとなった。中国では周作人に関する会議の開催が許されない状況にあるため、これが世界で初めての周作人に関する国際学会である。会議の概要は『魯迅研究月刊』(2018年10期)、『新文学史料』(2019年1期)で紹介され、大きな反響を呼んだ。12月には東京大学教授伊藤徳也氏が主催する「日韓現代中国文学ワークショップ」(12月22日、23日)に共催者として参加した。ここでの韓国研究者との討議と交流も極めて有益なものであった。年度末には小川の周作人研究を総括した『叛徒と隠士 周作人の1920年代』(平凡社2019年2月)が刊行された。 3年目の2019年度は3年間の研究の総括として、早稲田大学商学同攻会より『周作人国際学術シンポジウム特集号』(『文化論集』第55号、2019年9月発行)を編纂刊行した。このなかに収録した論文はシンポジウムで発表された論文だけではなく、「日韓現代中国文学ワークショップ」を通して研究交流を行っている梨花女子大学教授洪昔杓からも寄稿を仰ぎ、2017年より閲覧整理してきた安藤更生旧蔵の周作人書簡や松枝茂夫旧蔵の周作人書簡の整理目録も収録したもので、3年間の研究の集大成となった。
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