研究課題/領域番号 |
17K02654
|
研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
Lee HyunJun 小樽商科大学, 言語センター, 准教授 (40708369)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 崔承喜 / 石井漠 / 舞踊 / 朝鮮表象 / 植民地文化 / 『朝鮮日報』『東亜日報』『京城日報』 / 『別乾坤』『朝光』 / 朝鮮文壇 |
研究実績の概要 |
本研究は戦前の日本で活躍した朝鮮の舞踊家崔承喜を取り上げ、彼女が民族芸術の主体性を日本で確保してゆく経緯、またそれを可能にした日本や朝鮮などの後援者・文化人たちとの関わりを、当時の資料を通して検証し考察するものである。 まず、研究計画に従い、初年度には日韓における崔承喜資料のフィールドワークを行った。夏季の韓国フィールドワークにおいては韓国国会図書館をはじめ、韓国中央図書館やソウル大学において、当時の新聞記事報道を中心に崔承喜や石井漠関連記事を収集した。特に崔承喜が舞踊家としてデビューする1926年から亡くなった1969年にかけ、崔承喜報道を主に行っていた『朝鮮日報』『東亜日報』『京城日報』を中心に朝鮮における崔承喜や石井漠報道のあり方を調査した。また、当時の朝鮮文壇における崔承喜評を把握するために文芸雑誌『別乾坤』『開闢』『東光』『女性』『朝光』などから関連記事を調査、収集した。 一方、日本におけるフィールドワークでは神戸映画資料館で行われた個人所蔵品の崔承喜映像上映会に参観し、資料の所在や入手経緯、さらに資料解説を聞いた。この映像は短いものでありながらも、1920年代における崔承喜舞踊上演資料として、日韓の両国において戦後初めて公開された希少映像である。このフィールドワークの成果としては資料収集家(東京在住)の面談が果たされ、収集経緯や他の崔承喜関連資料の所蔵品の有無等、直接聞き取り調査を行ったことである。この他に東京フィールドワークでは朝鮮関連文献を多数収蔵している東京大学駒場図書館において、夏季韓国フィールドワークを踏まえながら、夏季調査で見落としていた朝鮮の文芸雑誌の崔承喜掲載記事を引き続き調査した。 以上日韓におけるフィールドワークで集められた資料は、年代・ジャンル・テーマ・人物ごとに資料を整理しながら、続けて解読及び分析作業を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り日韓におけるフィールドワークは着実に行ってきているが、しかし秋田調査は次年度への課題とした。なぜなら、日本のフィールドワークに割愛していた時間や費用が、研究計画提出時にはまだ発見されていなかった戦前の石井漠舞踊団(崔承喜出演)の希少映像上映会(神戸・東京調査)が決まったため、このフィールドワークを優先したからである。その理由は、今回発見されたこの映像資料が個人所蔵品であるため、今後の公開の見通しがなく、映像についての解説聴講や資料収集家に面談を打診するためには、この上映会の参観が必須でかつ重要であったためである。 さらに研究の一環として日本比較文学会大会(6月山形)、日本比較文学北海道支部大会(7月旭川)、朝鮮学会(10月東京)に参加し、学会活動も活発に行ってきた。これらの学会活動では、比較文学比較文化研究をはじめ、近代における朝鮮の歴史・文化・文学研究の研究者との交流を通して、新たな研究課題の発見や展望、また様々な取り組みに対する意見交換を行った。それに加え、現在北海道内の日韓比較文学研究者(また朝鮮研究者)が少ないため、自分の研究課題を学会で積極的に広めながら、日韓における研究者ネットワークの構築を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、平成29年度の日韓で収集した資料の解読及び分析を引き続き行い、その研究成果を今年7月21日に行われる日本比較文学会北海道支部大会において報告する予定である。7月の学会発表後の新たな課題を踏まえながら、秋田調査や韓国調査を引き続き行う予定である。その成果は年度末掲載を目標に論文としてまとめ、大学紀要か所属学会誌に投稿する予定である。
|