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2018 年度 実施状況報告書

18-19世紀文学におけるエンブレムの受容と変容に関する横断的研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K02655
研究機関宇都宮大学

研究代表者

出羽 尚  宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (00434069)

研究分担者 木村 三郎  日本大学, 芸術学部, 研究員 (00130477)
植月 恵一郎  日本大学, 芸術学部, 教授 (10213373)
松田 美作子  成城大学, 文芸学部, 教授 (10407611)
時田 郁子  成城大学, 文芸学部, 准教授 (60757657)
伊藤 博明  専修大学, 文学部, 教授 (70184679)
山本 真司  青山学院大学, 経済学部, 准教授 (80434976)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードアレグザンダー・ポウプ / 『ペリクリーズ』 / 旧約聖書 / 『ファウスト』 / 『ヒエログリフ集』 / 『ホラティウスのエンブレム集』 / 『白鯨』 / ドゥレクリューズ
研究実績の概要

年度当初に設定した推進方策に基づき、各研究者が研究を遂行した。
出羽は、アレグザンダー・ポウプの『髪の略奪』の挿絵を伝統的なイコノグラフィーとの関係から分析し、ジョンソン協会の研究大会で発表した。松田は、16~18世紀の「大陸」とイギリスのエンブレムの関連を追及するため、北イタリアにいたイギリス人イエズス会士の活動やバロック絵画について、フィレンツェで調査、アカデミア美術館などでエンブレムに通じる寓意画を収集した。プロテスタント派もカトリック派の図像利用に倣い視覚を用いた信心が特に家庭で実践されていたことを確認した。山本は、主に『ペリクリーズ』や『テンペスト』を中心にシェイクスピアのロマンス劇の改作上演を再考するために必要な文献を購入し、また大英図書館などで収集した資料に基づき、『ペリクリーズ』において旧約聖書の主題が独自に発展して様々な観客に受容されるようになる通時的過程に着目した発表を行った。植月は、メルヴィルの『白鯨』に登場する鯨のイメージの由来を辿った。メルヴィルは作品中で、エンブレムに関して、錨と海豚を描いた一枚に言及している。当時鯨も海豚も同類と見なされれ、他のレヴィアタン退治の絵画や博物誌の挿絵などとも重なり合って当時の鯨のイメージが形成されたことが明らかとなった。
時田は、ゲーテの『ファウスト』第二部におけるホムンクルスについて、人造人間を造ろうとする試みの系譜を踏まえ、ゲーテが19世紀前半の生物学や地学など科学の進展と絡めて独自のホムンクルス像を造形したことを明らかにした。木村は、19世紀における、美術史と文学との関係について、とりわけ、批評家ドゥレクリューズの書き残した文学性の高い批評を中心に調査を行い、論文を完成した。伊藤は、オットー・ウェニウスの『ホラティウスのエンブレム集』の影響について研究するとともに、ホラポッロの『ヒエログリフ集』を翻訳した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

各研究者の研究課題に関して、それぞれに研究調査を遂行し、また、口頭発表、論文発表、書籍刊行の形で成果を公表しており、一定の進捗をしたといえる。あわせて、年二回の研究報告発表会を本年度も継続して行っており、それぞれの研究成果を共有することによって、課題の確認や、研究の方向性についての意見交換を常に行っており、それを通じても、研究はおおむね順調に進んでいることが確認された。

今後の研究の推進方策

研究最終年度に当たり、各研究者の研究を下記の通りそれぞれに遂行すると同時に、研究の成果をまとめる報告書作成を準備する。
出羽は、エドマンド・スペンサーの著作および挿絵とエンブレムの関係を研究する。松田は、前年度に確認した視覚を用いた信心に関して、より具体的に、エンブレムを用いた信仰のありかたを明らかにしていく。山本は、 前年度に十分に調査できなかった『テンペスト』について必要な研究調査を行い、シェイクスピア作品を集めた『全集』(1791-1803) や『全集』(1858-60)の挿し絵表現とテクスト改変の関係からシェイクスピアのロマンス劇の改作上演を中心に、舞台装置や上演台本も参考にしながらシェイクスピア作品とエンブレム的背景の影響関係を考察する。植月は、18世紀イギリスの詩人ジョン・ダイヤーの『羊毛』の羊に関する描写について、それ以前の羊のイメージ、とくにエンブレムや版画に描かれたものが如何に作用したか、ジョージ・ウィザーらの作品を中心に考察する。
時田は、ハインリヒ・フォン・クライストの戯曲『ハイルブロンのケートヒェン』(1808)を研究対象にする。クライストは1808年に芸術雑誌『フェーブス』を創刊して毎月1回12号まで発行したが、その表紙にネプトゥヌスの図像を用いており、クライストと図像の関連を探る。木村は、研究計画に基づき、フランスの美術批評、並びに詩とエンブレムの関係について研究する。伊藤は、パオロ・ジョーヴィオの『愛と戦いのインプレーサ集』およびクロード・パラダンの『英雄的ドゥヴィーズ集』の研究を行う。

次年度使用額が生じた理由

木村は、分担金が、海外出張による調査には不足していることから、平成31年度に集中して使用することにした。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] ポウプ著1714年版『髪の掠奪』の挿絵―ウェヌスのイコノグラフィーとの関連―2019

    • 著者名/発表者名
      出羽尚
    • 雑誌名

      宇都宮大学国際学部研究論集

      巻: 47 ページ: 1,14

  • [雑誌論文] ホムンクルスの冒険―ゲーテ『ファウスト』第二部第二幕2019

    • 著者名/発表者名
      時田郁子
    • 雑誌名

      ヨーロッパ文化研究

      巻: 38 ページ: 91,116

  • [雑誌論文] 画家プッサンと1614-19年のパリの出版史2019

    • 著者名/発表者名
      木村三郎
    • 雑誌名

      日仏図書館情報研究

      巻: 43 ページ: 13,34

  • [雑誌論文] トムソンの『怠惰の城』と怠惰の系譜(3)2018

    • 著者名/発表者名
      出羽尚
    • 雑誌名

      宇都宮大学国際学部研究論集

      巻: 46 ページ: 43,54

  • [雑誌論文] 『白鯨』解読――造形芸術から見る文芸作品の二重構造2018

    • 著者名/発表者名
      植月惠一郎
    • 雑誌名

      日本大学芸術学部紀要

      巻: 68 ページ: 13,31

    • 査読あり
  • [学会発表] 挿絵から「見る」ポウプ2018

    • 著者名/発表者名
      出羽尚
    • 学会等名
      日本ジョンソン協会第51回大会
  • [学会発表] J・M・W・ターナーのジプシーを描いた風景画2018

    • 著者名/発表者名
      出羽尚
    • 学会等名
      関西コールリッジ研究会第179回例会
  • [学会発表] エンブレム化するコミュニティ:ヨナから『ペリクリーズ』へ2018

    • 著者名/発表者名
      山本真司
    • 学会等名
      エンブレム協会第23回研究会
  • [図書] 光彩のアルストピア2019

    • 著者名/発表者名
      足達 薫、遠山 公一、喜多村 明里、足達 薫、出 佳奈子、金山 弘昌、伊藤 博明、石井 朗
    • 総ページ数
      308
    • 出版者
      ありな書房
    • ISBN
      9784756619648
  • [図書] ヒエログリフ集2019

    • 著者名/発表者名
      ホラポッロ、伊藤 博明、石井 朗
    • 総ページ数
      232
    • 出版者
      ありな書房
    • ISBN
      9784756619655
  • [図書] イメージ制作の場と環境2018

    • 著者名/発表者名
      近世美術研究会編(木村三郎、出羽尚ほか分担執筆)
    • 総ページ数
      416
    • 出版者
      中央公論美術出版
    • ISBN
      9784805508626
  • [図書] 黎明のアルストピア2018

    • 著者名/発表者名
      金山弘昌、ダニエル・W・メイズ、市川佳代子、足達薫、喜多村明里、浦一章、伊藤博明
    • 総ページ数
      446
    • 出版者
      ありな書房
    • ISBN
      9784756618603

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公開日: 2019-12-27  

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