研究課題/領域番号 |
17K02665
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
立石 謙次 東海大学, 文学部, 准教授 (50553426)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中国雲南省 / 白族 / 白文 |
研究実績の概要 |
2017年7月16日(日)に、研究協力者2名とともに、研究代表者が所属する東海大学湘南校舎にて第1回の研究会を実施した。研究代表者により本課題の概要を示したうえで、研究協力者より本課題の研究対象たる白族の近隣に住むナシ族に関する研究状況につい情報の提供を受けた。さらに本課題の今後の研究目標について検討した。検討の結果、すでに着手している大本曲曲本の翻訳および語彙集の作成を優先し2017年度中に出版する。2)申請時の計画を一部変更し、翻訳・出版を完了させた曲本ごとに、用例集を作成する。以上のように結論したのは、本課題の補助期間中に確実に成果を挙げて、研究を継続させていくためである。2017年8月17日~30日に雲南省大理州において、曲本に関する聞き取り調査をおこなった。同省昆明市の雲南大学において研究協力者とともにテキストの翻訳確認作業をおこなった。さらに2017年9月に中国の広西師範大学出版社より、『大本曲『〓美案』研究―雲南白族白文分析』(〓は金偏に則)を出版社した(単著、使用言語は白語、中国語、日本語)。中国での出版を選択したのは、現在日本国内での白文研究は進んでおらず、比較的白文研究が進んでいる中国で出版したほうが、今後の国際的な学術交流を図る上では有利であると考えたためである。2017年10月14日‐16日に、香港 中文大学で開催されたEast Asian Anthropological Association(EAAA)の大会に発表者として参加した。また現在駿河台出版社のHPにて公開されている「世界はことばでできている」というコーナーにて、2018年1月より全4回の予定で「ペー語(白語)」の項目を執筆しており、現在第3回まで公開している。この文章を発表したのは、これまでの研究代表者による研究成果を、国民に還元する機会になると考えたためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度の段階で、中国の出版社より曲本の翻訳分析及び語彙集を出版できた。これにより研究代表者による大本曲の曲本の分析は2冊となった。今後はこれら2冊の成果から用例集作成の作業に着手できるようになった。今年度は、2016年度に出版した『大本曲『黄氏女対金剛経』の研究―雲南白族の白文の分析』のテキストより、用例集の作成を行うが、同資料より用例を集めるべき語彙についてはすでに選定済みで、仮のレイアウトも作成済みである。またこれまでの成果も、一部ながら一般の方々が利用できるウェブサイト上で、一般の国民に向けて発信できる機会を得ることができた。 ただし申請時に予定していた、現地インフォーマントが逝去されたため、現地調査の体制を立て直す必要がある。これについては、これまでにインフォーマントが協力して残してくれた音声資料があるためこれらを利用して、雲南大学の楊文輝副教授の協力をもとに、曲本の分析を進めていくことになる。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度については、『大本曲『黄氏女対金剛経』の研究―雲南白族の白文の分析』の語彙集をもとに用例集の作成をおこなう。すでに漢語・日本語訳と語彙集は同書に掲載されているものの、実際の用例文の漢語・日本語への翻訳については再度、雲南大学の楊文輝副教授と確認作業をして、用例集としての精度を高める努力をする。このため7~8月、2~3月に現地での聞き取り調査を継続する。また語彙の選定についても、国内での研究会を開催し、研究協力者とともに選定された語彙が妥当であるかの検討を行う。そして2019年度7月までにはこれら作業を終了させ、その成果の発表を目指すこととしたい。このように『黄氏女対金剛経』テキストをもとにした用例集を作成し、この作業経験をもとに順次、別のテキストの分析を進めていくことにしたい。
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