研究課題/領域番号 |
17K02670
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中本 武志 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (10292492)
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研究分担者 |
高橋 大厚 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (00272021)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生成統語論 / ミニマリスト・プログラム / 分散形態論 / 心理言語学 / 言語接触 |
研究実績の概要 |
コロナ禍のため、予定していた国際学会への参加は全くできなかった。 しかし、研究代表者(中本武志)の論文は2本完成し、一本は査読中、もう一本は採択された。 査読中の論文はSVO言語とSOV言語のコードスイッチングで「I want to be ゴールキーパーになりたい」のような、SVOV構造を持つかなり特殊な構文を扱った。一つの目的語を二つの(ほぼ同義の)動詞が共有するという現象は、従来の統語理論では説明が難しい。しかし、作業場を拡張することにより、mergeの概念を変更せず、強いミニマリストの仮説を維持したまま、構成素共有の構造を説明することができた。すなわち、データと理論の両面で、新規性のある研究であると言える。 採択された論文は言語接触に関するものである。本来は翻訳に見られるコードスイッチングを分析していたのであるが、その副産物として翻訳論の論文が完成した。本来の研究課題とは若干ずれるが、この分野では比較的インパクト・ファクターの高い、Q1レベルの国際的雑誌であるTargetに掲載が決まったことは素直に喜びたい。なお、この論文は国際共著論文でもある。 また、共同研究者(高橋大厚)もインパクト・ファクターの高い国際的な言語学雑誌(The Linguistic Review, 37(1), 47-74)にDerivational argument ellipsis(DOI: https://doi.org/10.1515/tlr-2019-2034)という論文が掲載された。同論文は日本語などの項省略を扱うが、コードスイッチング分析の基盤となる研究でもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
会話データの文字化はまだ多少残っている。文字化した部分についても、CHILDES(チャイルズ、Child Language Data Exchange System);自然発話データを共有するためのシステム)に投稿するために形式を整える必要がある。 コロナ禍のため、国際学会への参加は見合わせざるを得なかったが、論文の執筆にはある程度集中でき、研究分担者の業績と合わせて、掲載済みの論文が一本、掲載決定の論文が一本ある。いずれもインパクトファクターの高い国際的な言語学雑誌である。また、査読中の論文も一報ある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に合わせて、なんとかあと二本は国際的な言語学雑誌に投稿したいと考えている。 文字化した言語データも、CHILDES(チャイルズ、Child Language Data Exchange System);自然発話データを共有するためのシステム)用に形式を整え、世界中の学者が利用できるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
最大の理由はコロナ禍により、国際学会はもちろん、国内学会への参加を見送らざるを得なかったことである。そのため、旅費や大会参加費の仕様ができなかった。また、授業を始めとする大学内の様々な行に忙殺され、必然的に研究のエフォート率が下がってしまったためである。言語データの文字化に関しても、アルバイトと直接の打ち合わせが難しく、諦めなければならなかった。
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