本研究の目的は印欧語の代名詞の曲用パラダイムの変異と複他動詞文の非主語項を照応する接語代名詞の実現形式の言語間・方言間変異を最適性理論により説明することであった。形態・意味の有標性階層から派生する性・数・格・人称素性の有標性制約群・忠実性制約群及び上記の有標性階層と意味役割階層から生じる調和的制約配列を提案した他,同一の素性複合を持つ接語の反復を禁止する有標性制約を提案したが,代名詞の曲用パラダイムの一部(特に,無標的な素性複合が有標的形式により担われる場合),複他動詞の接語代名詞群の変異については,資料不足等のためもあり,考察を深めることができなかった。
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