本年度の主要な実績は以下の通りである。 (1)現代日本語バアイ節について、主節時基準でも発話時基準でもないタイプのテンスが存在すること、およびこのタイプの確例がタ形節に限られ、ル形節にはないことから、主節時基準でない相対テンスの基準時の一部が、いわゆる運命の分岐点である可能性が高いことを明らかにした。(2)古典日本語(主に上代・中古語)において、名詞修飾節から派生したとみることができるタイプの従属節について量的な検討を行い、現在資料として残されている文献について言えば、現代語に比べて語彙のバリエーション・出現頻度ともに低いという調査結果を得た。(3)複文と連文との互換性という問題が日本語文法論・国語教育学のなかで重要な課題として残っていることを確認し、従属節(複文)と連文との互換性調査において、コト節・ノ節を中心とした文名詞節は、11分類中における従属節の中で、条件節についで連文化との互換性が低いタイプであることを明らかにした。(4)名詞修飾節を含む文のねじれについて小・中学校の児童生徒作文の調査を行い、複文全体が名詞述語文となるタイプにおける文のねじれ(誤り)は、学年上昇において自動的な修正が効きにくいタイプの誤りであることを確認した。 上記の実績のうち、(3)については2020年6月に韓国日本言語文化学会において口頭発表をおこなった。それ以外の実績については2020年度は発表に向けてのとりまとめをおこない、(1)については投稿中、(2)(4)については追加調査ののち投稿準備をおこなっている。
|