研究課題/領域番号 |
17K02676
|
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
益子 幸江 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (00212209)
|
研究分担者 |
峰岸 真琴 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20183965)
鈴木 玲子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (40282777)
降幡 正志 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (40323729)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 言語のリズム / 声調言語 / 非声調言語 / イントネーション / ピッチカーブ |
研究実績の概要 |
言語のリズムについて、声調言語と非声調言語という2つのグループ間の違いについて研究を進めた。 声調言語として取り上げているタイ語とラオ語については、意味のひとまとまりである1音節単位と、2音節単位について、声調のピッチカーブと持続時間の比較を行った。これらは1発話内でも起こるとともに、一連の発話の発話間で起こっている、情報構造の表現法(主題、焦点など)と関連があるので、それらの言語分析の情報と突き合わせる形で比較を行った。少なくともタイ語では、音声学的手段よりも、語句の移動や分裂文の形成といった統語的な手段が用いられていることがわかり、音韻論的に制約の多いピッチや持続時間があまり利用されていないことが判明した。日本語では音声学的手段が多用されうるものであるので、言語の特徴によっての異なり方が明らかになってきたと言える。 また、非声調言語としてはインドネシア語について分析を進め、こちらでも、情報構造の分析と突き合わせる形で音声の分析を進めた。また、インドネシアで、インドネシア語に次いで話者の多いスンダ語についても同様の分析を進めた。インドネシア語と同様の、非声調言語であり多音節語である日本語と類似であるかというとそれほどでもないが、声調言語とは異なる点は見つかっているので、日本語とインドネシア語での類似点についても考察を進めている。 2018年度は、タイ語、インドネシア語についての発表を行ったほか、比較分析の対象としてベトナム語についての発表も行った。また、シャン語(ビルマ、ラオス、中国にわたって分布する)の分析および、ラオ語の一方言で、ラオ語の特徴をよく残していると言われているルアンパバン方言の分析にも着手している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、タイ語、ラオ語、インドネシア語について、それぞれ分析を進めた。音声分析を行い、言語の情報構造分析と突き合わせる形で進めてきた。トピック、主題化、焦点化、強調といった機能については、基本的な分析を行うことができた。ただ、情報構造は複雑であるので、その分析は各言語で今後も続けられる予定である。 研究発表については、このテーマだけでの発表会あるいはワークショップは行わなかったが、各研究分担者および研究代表者がそれぞれ機会をとらえて、学会発表や研究会発表を行っており、また、紀要および査読論文誌にも投稿を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度は最終年度に当るため、3年間のまとめができるような方向に進める。しかし、研究テーマ自体は広範にわたるものであるので、結論を急ぎ過ぎず着実に進める。 具体的には、ラオ語の3語文の分析を行い、すでに行った2音節語(句)の分析を文のレベルまで広げる。そしてこの分析は、すでに行っているタイ語の3語文の分析結果と比較対照することができるようになる。声調言語としての共通点と、声調言語であっても言語間で相違する点を見極めてゆく。 さらに、声調言語の分析対象を広げておくことを予定しており、2018年度にはすでにベトナム語を分析し、研究成果の発表も行った。2019年度も引き続き分析を進める。また、シャン語(ビルマ、ラオス、中国にわたって分布する)の録音・分析も予定している。さらに、ラオ語の一方言で、ラオ語の特徴をよく残していると言われているルアンパバン方言の録音・分析も進める予定である。 非声調言語のインドネシア語では、さらに情報構造に関する研究を進め、音声分析の音響特徴の種類を増やす予定である。現在はトピックマーカーに集中しているが、もう少し視野を広げて、焦点化も取り上げてゆく。
|