研究課題/領域番号 |
17K02677
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
秋廣 尚恵 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (60724862)
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研究分担者 |
川口 裕司 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (20204703)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 連結辞 / 共時的研究 / 通時的研究 / コーパス / 因果関係のマーカー / 意味の拡大 / 多カテゴリー性 |
研究実績の概要 |
本科研プロジェクトの第一年目ということもあり、先行研究の収集とコーパスの整備(主に転写の校正作業、接続表現のタグ付け)を開始した。研究成果としては、代表者の秋廣はフランス語の共時的研究として、コーパスに基づく parce queの記述結果を論文にまとめた。その論文は、パリ第3大学で行われているインフォーマルな話し言葉コーパスにおける文法記述研究プロジェクトFRACOVのサイトに掲載された。学術交流の面では、5月にはオルレアン大学のGabriel Bergounieux氏と、また、9月にはやはりオルレアン大学のMarie Skrovec 氏と会い、話し言葉コーパスの問題について意見交換をした。後半期には、引き続きparce que の研究を進めつつも、新たな問題として、前置詞の apres についての研究を開始した。apresは、前置詞、副詞、連結辞としての多カテゴリー的であり、かつ空間的、時間的、論理的な「後続性」へと意味を拡大してきたマーカーの研究であり、本科研プロジェクトにとっては格好のケーススタディである。このテーマについて、12月には名古屋大学にて口頭発表を行った。その際、研究会の主催者であった、名古屋大学の藤村逸子氏、ストラスブール大学の Catherine Schnedecker氏のアドバイスを得た。さらに、このテーマに関して、国内外でのいくつかの出版、口頭発表の企画を開始した。分担者の川口は、また、10月には通時的文法研究の第一人者であるBernard Combettes氏を招聘し、フランス語学会共催で、東京、及び京都で講演会を行った。その報告書は、フランス語学研究52号(2018年6月発行予定)に掲載されている。また 文法化の理論に関する先行研究を集中的に渉猟し、コーパスに基づく因果関係のマーカーに関する通時的研究の出版、発表に向け準備を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コーパスの整備、先行研究の渉猟、学術交流、成果物の発表に関して順調な成果を上げている。また、共時的研究に関しては、parce que の研究はほぼ一通りの分析が済んだところであり、来年度に向けて、通時的研究の部分が完成するならば、共時的・通時的研究の両輪がそろったケーススタディーの最初の例となる。さらに、apresについても研究がスタートし、第2のケーススタディとなることが予想される。これらのケーススタディを通して、本科研プロジェクトの主旨である、多義性とマーカーの用法の変遷の関係が明らかになると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
30年度に関しては、まず parce queについて、共時的、通時的研究の両面からさらに研究を進める。共時的研究に関しては、日本ロマンス語学会にて口頭発表をし、論文に応募する。また、通時的研究に関しては、文法化の理論に照らし、コーパスに基づき記述を進める。その研究成果を盛り込んで、代表者、分担者共同で論文の執筆を行う予定である。 さらに、後半期にはapresの共時的研究を本格的に進める。11月にはフランスにて「話し言葉研究50年の歩み」についての国際学会が開催されるので、その学会への口頭発表ないしは出席参加を予定している。(現在応募結果待ち) 学術交流に関しては、共時的連結辞の専門家、ないしは通時的連結辞の専門家を招聘するべく、現在調整を行っている。 コーパスに関してはまだ転写の終わっていない音声ファイルの転写を進めつつ、接続表現についてのタグ付けを代表者が中心となって行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回はコーパスの転写の校正やタグ付けは外部に委託せず、秋廣が自分で行っていたため、謝金の支出をしなかった。この未使用額は来年度、新たな音声ファイルの転写に回す予定である。さらに、海外出張は今回はせず、国内出張のみとなったので、当初計上していた旅費が未使用額として繰り越されたが、これについては、次年度に海外出張、海外研究者の招聘に使用する予定である。
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