研究課題/領域番号 |
17K02681
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鄭 聖汝 大阪大学, 文学研究科, 講師 (60362638)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 他動性 / パラメータ / 言語類型 / 最適理論 / 実証的研究 |
研究実績の概要 |
本研究は、個別的に適用すると相反する結果のでる、Hopper &Thompsonの普遍仮説ならびに池上の類型仮説による他動性についての二つのアプローチを融合し、他動性パラメータの適用優先順位が最適理論の手法で決められることによって、自他構文の選択が予測できる、実証的他動性理論の構築を目的とする。方法論的には、日本語(ナル型)と英語(スル型)を基軸に置き、SOV型の4言語とSVO型の4言語取り上げ、自他構文選択に関与するパラメータについて、優位性を独立的に測りうる実験的調査を実施して、他動性パラメータの適用優先順位を見極め、理論の構築につなげるものである。 今年度は、日本語と英語を対象に、①言語使用調査と②対訳資料調査を行った。①は本研究が構築した「映像による実験調査」と「アンケートによる実験調査」(両方とも南リノイ大学で実施)による大量のデータを用い、再分析を行った。また南イリノイ大学を再訪問し、データの補充と見直しができた。②では、日本語原本の小説と英語原本の小説を一冊ずつ用い、それぞれの日本語版と英語版のデータをエクセルに入力し、自他使用のずれや傾向を分析した。これらの一次データを以て、ライス大学の柴谷方良教授(海外共同研究者)のところに行き、データの検討および理論構築のための意見交換を行い、来年度の研究・調査に備えた。 研究成果としては、Causative Constructions in Japanese and Korean,Prashant Pardeshi and Taro Kageyama(eds.),Handbook of Japanese Contrastive Linguistics. De Gruyter Mouton.137-172.の他に、投稿中の論文2本、韓国言語類型論学会(招待講演)やJ/K 25(基調講演)など、5本の研究発表がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りのデータが得られ、分析も進んでいる。今年度得られたデータの分析に基づいて次年度の見通しもできたので、一年目としては、概ね順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
年度ごとに2言語ずつ現地調査を行い、データを分析していく。次年度の平成30年度は韓国語と中国語を調査の対象としており、平成31年度はマレー語とタイ語、平成32年度はヒンディー語とテルグ語が調査対象である。基本的には、今年度と同じ要領で調査項目を作成し、それぞれの言語で翻訳作業を行い、現地調査に備える。対訳資料調査の分量・アンケート調査の期間および規模も29年度と同じである。現地調査の期間は、夏休みと冬休みの期間を利用してそれぞれ2週間ほどを予定している。また海外研究者の協力を得て現地で2名ほどインフォーマントを採用し、調査票を使って一定の文法現象を調査する。得られたデータ(8言語の言語事実および使用実態に関する調査結果)はすべてエクセルファイルに入力して、テータベース化する。これらのデータに基づき、海外共同研究者と年に二回ほど研究打ち合わせを行い、理論構築を行っていく。 成果発表・論文執筆などについては、単独または共同で国内外の言語学関連学会において成果を発表し、学会誌にも積極的に投稿する。最終年度の平成32年度には、8言語に対する4年間の研究成果を報告書としてまとめ、印刷する。将来的には、科研費の研究成果公開促進費の出版助成を受け、出版・公開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の後期は、研究代表者のサバティカル期間中(2017年10月~2018年3月)であり、客員研究者として南イリノイ大学とライス大学にそれぞれ3か月間滞在していたため、渡航に伴う費用などが節約できた。 次年度は、本来計画していた韓国語と中国語の調査以外に、9月頃、ヨーロッパにおける他動性研究の進展状況を調査するため、スウェーデンのストックホルム大学とヨーテボリ大学を訪問し、そちらの研究者と打ち合わせを行う計画である。ということで、前年度の繰り越し予算はこちらに充てる予定である。
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