研究実績の概要 |
前年度の日本語・英語の①言語使用調査と②対訳資料調査に加え、今年度は、目標としていた韓国語・中国語の他にタイ語やヒンディー語の調査にも取り組むことができた。まず、こららの4言語の対訳資料をエクセルに入力し、逐語訳(注釈)を進め、言語間の自他使用のずれや傾向を調査した。また、対訳資料に基づく自他使用の調査には翻訳資料がもつ限界があるため、それを補うために実際の①言語使用調査も行い、他動性の顕著性(transitivity prominence)の観点から他動詞構文の拡張の度合を測った。この二つの方法を用いて、言語間の相違や類型的特徴を見極められる作業を推し進めている。以上のデータと調査結果を以って、海外共同研究者の柴谷方良教授(ライス大学)と打ち合わせを行い、理論的考察を行ったうえ、今後の調査方向性と次年度の計画を立てた。また北欧語の他動性の状況にも関心を広げ、ヨーテボリ大学とストックホルム大学を訪問し、ヴォイス現象と他動詞構文の関係について意見交換を行った。
研究成果として、Sung-Yeo Chung and Masayoshi Shibatani(2018),Causative Constructions in Japanese and Korean,Handbook of Japanese Contrastive Linguistics. De Gruyter Mouton.137-172、「使役」(『日本語辞典』、東京堂出版)の他に、投稿論文1本(採択済、2019年9月『言語研究』)、Masayoshi Shibatani and Sung-Yeo Chung(in press), Nominal-based nominalization, Japanese/Korean Linguistics 25:63-88, 北京大学120周年記念招待講演など3本の発表がある。
|