研究課題/領域番号 |
17K02685
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研究機関 | 国際教養大学 |
研究代表者 |
邊 姫京 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (90468124)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 日韓閉鎖音 / 日本語の語頭閉鎖音 / VOT / 後続母音のfo / 韓国語の語中閉鎖音 / 知覚キュー / 閉鎖区間 |
研究実績の概要 |
前年度は日本語の語頭閉鎖音のカテゴリー区別にかかわる音響特徴としてVOT以外に後続母音のfoが関与していることを明かにしたが,今年度はさらに分析を進め,次の2点を明らかにした。
(1)語頭閉鎖音のカテゴリー区別にはどの地域もVOTとfoが用いられる。しかしその詳細は地域により異なる。音響特徴が現れやすいクリアスピーチにおいて,東北地方はもっぱらfoのみでカテゴリー区別が行われるが,中部地方はVOTとfoがほぼ同等に機能する。九州と近畿はVOTが優先的に,foが副次的に機能する。 (2)韓国語の語頭閉鎖音にもVOTの変化が起こっており,従来VOTの違いで区別されていた平音と激音は,現在は後続母音のfoの違いで区別されている。この弁別機能のVOTからfoへ移行は,主に無アクセント地域であるソウル方言に見られる。同様のことが日本語の無アクセント地域(宮崎方言)でも観察されるかを検討した結果,ソウル方言の場合とは異なり,カテゴリー区別に優先的にかかわるのはVOTであり,foの使用は他の有アクセント地域よりも消極的であった。
知覚に関しては,当初の計画どおり(1)韓国語の語中閉鎖音の知覚キュー,(2)韓国語母語話者による日本語の語頭閉鎖音の知覚キューを明らかにするために,韓国語母語話者を対象に聴取実験を行った。(1)には,前年度の研究結果を基にパラメータをVOTとCD(閉鎖区間)にしぼり,これらを段階的に組み合わせた合成音を用いた。結果では、韓国語の語中閉鎖音は,激音はCDと関係なく長いVOTのみで知覚される。また,濃音は短いVOTと長いCD,平音は短いVOTと短いCDで知覚されることがわかった。(2)には,VOTとfoを組み合わせた合成音を用いた。韓国語母語話者は日本語の語頭閉鎖音を,短いVOTと低いfoをもって有声音と知覚し,長いVOTと高いfoをもって無声音と知覚することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度後半に予定していた韓国での知覚実験の日程が多少ずれたが,2019年4月に実施することができた。国内の知覚実験は2019年度の6-7月中に実施可能なので,当初の計画どおりすべての実験を2019年度前期までに終わらせる目途が立った。これまで集めたデータの分析も概ね順調に進んでおり,学会での報告や論文投稿も計画どおり行う予定である。
本研究は日韓両言語の閉鎖音を分析対象としているが,音声収録時にあわせて収録した韓国語の母音についても興味深い知見が得られたので,その結果を学会で報告し,一部は論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は今年度が最終年度である。前期に国内での知覚実験が終われば予定していた実験はすべて終了する。後半は残りのデータの分析と学会発表,及び論文作成に充てる予定である。
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