研究課題/領域番号 |
17K02686
|
研究機関 | 群馬県立女子大学 |
研究代表者 |
小笠原 奈保美 群馬県立女子大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (50630696)
|
研究分担者 |
甲村 美帆 群馬県立女子大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (50345419)
大藤 建太 会津大学, コンピュータ理工学部, 准教授 (80549303)
Ginsburg Jason 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (80571778)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 災害コミュニケーション / 災害心理 / 防災 |
研究実績の概要 |
前年度に、被災者の避難行動に関するアンケート調査を実施した結果をまとめた過去の文献のメタ分析を行い、危険認知と避難行動心理に関する促進・抑制要因を確定した。今年度は、それらの要因を盛り込んだ避難心理モデルを作成し、また、要因を検証するため、アンケート調査や音声知覚実験を行う予定だった。しかし、すでに過去の文献で発表されている様々な避難心理モデルを読み込み、理解を深める必要性があると感じたため、オリジナルの心理モデルを作成するより前に、文献の精査を優先させた。また、今年度、研究代表者が日本音響学会の研究委員会の1つである「災害等非常時屋外拡声システムのあり方に関する技術調査研究委員会」の委員になったことや、音響工学系の研究者が多く参加する研究会に出席したことで、工学系の研究者の方々と知り合う機会があった。そこで、音声知覚実験の方法、特に刺激音声について工学系の知識を用いて音声を作成した方が、より現実に即した実験ができることを学んだ。また、投稿論文へのコメントで学生のみを被験者にするのではなく、広い年代の一般の方々も実験に参加すべきという意見をいただき、当初予定していた実験の大幅な修正を余儀なくされた。よって今年度は、実験の見直しを行い、来年度に実験を行うこととした。また、先に述べた「災害等非常時屋外拡声システムのあり方に関する技術調査研究委員会」の活動として、言語学的側面から避難呼びかけ文を見直し、自治体の担当者に活用してもらうため、より効果的な文言にするためのガイドラインを作成した。これはまだ予稿の段階であるが、研究成果の1つとして挙げておきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」のところでも述べた通り、実験音声の作成にあたり、音響工学の技術を取り入れた方がより実際の災害状況に近い音声を作ることができると考えた。具体的には、避難呼びかけ文を読み上げてもらいその音声を録音し、それに雨と風の音をかぶせるという方法を取り入れたい。雨と風はノイズとして、sound-to-noise ratio (SN比)を任意に設定し、録音音声とミックスする。研究代表者と研究分担者は、これまでそのような手法を使ったことがないため、他の方に任意のSN比でミックスする方法を聞いたところ、Pythonというプログラミング言語を使ってコードを書くことがわかった。Pythonも使ったことがないため、このプログラミング言語を勉強してかなりの期間に渡って試行錯誤したが、失敗に終わった。しかし、最近、他のプログラミング言語を試したところ、こちらが望むSN比でミックスすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
任意のSN比で音声にノイズをかぶせる方法がわかったので、実験音声はあまり苦労せずに作成できると思う。また、もう1つの懸念材料である広い年齢層の被験者を集めることだが、こちらは民間の調査会社に委託することで解決できる。今後は、風雨のノイズを被せた避難呼びかけ文を被験者に聞かせ、どの程度内容が理解できたかを回答してもらう。避難呼びかけ文は、自治体の防災マニュアルや内閣府の「避難勧告等に関するガイドライン」に掲載されている文型とそれを単文化・命令調にした文型を使用して、オリジナルのものと比較することで単文化・命令調の効果を測る。また、被験者には「わかりやすさ、緊急性、信頼性」の3つの観点から印象を回答してもらう。さらに、実際の災害時では、近隣からの避難の呼びかけをきっかけに避難行動を取る場合が多いことがメタ分析からわかったので、避難呼びかけ文に含まれる災害情報が人から人へ伝わっていく過程を調査するための実験を行う予定である。具体的な方法としては、4、5人のグループの中で最初の人に風雨のノイズを被せた避難呼びかけ文を聞かせ、次の人に口頭で内容を伝える。それぞれの人の発話を録音し、最初の人から最後の人に行くまでにどのように内容が変化するかをみる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた実験の実施が遅れたため、実験にかかる支出がなかったため。次年度は、研究代表者や研究分担者が所属する大学の学生だけでなく、広く一般から被験者を募って実験を行う計画なので、予算を適切に執行することができる。
|