研究課題/領域番号 |
17K02687
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研究機関 | 公立鳥取環境大学 |
研究代表者 |
桑本 裕二 公立鳥取環境大学, 人間形成教育センター, 教授 (40333273)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 倉吉方言 / 平板型アクセント / 起伏型アクセント / 開合音 |
研究実績の概要 |
1.当該方言を含む山陰地方に幅広く観察される、開音由来のア段長音の出現の系譜とその理論的派生の説明について研究し、前年度(平成29年度)末に行った口頭発表を基に論文を執筆した(「鳥取県倉吉方言におけるア段長音の派生と分布について」『東北大学言語学論集』第27号,19-29)。当論文は、平成30年12月に東北大学言語学研究会から出版された。 2.倉吉方言のアクセント分布を東京方言のそれと比較対照するために、準備として、『NHK日本語発音アクセント新辞典』(NHK放送文化研究所編,2016年)を用いて4モーラ語のアクセント分布を全数調査し始めた。数万に及ぶ見出し語を手作業で調べるという手間のかかる調査のため、当該年度中葉から開始した作業は、当該年度中に終わらず、当令和元年度に持ち越しとなった。現在は鋭意調査中である。 3.倉吉方言の平板型アクセントの東京方言との差異は、音調の配列の違いにあると推測し、平成31年2月から3月にかけて、倉吉市内、東伯郡湯梨浜町内において幅広い年齢層を対象に平板型アクセントの実態調査を行った。調査の詳細は、倉吉市内数カ所(主にインフォーマントの自宅)および、湯梨浜町立北溟中学校において調査、インフォーマントは高年層2名、中年層3名、若年層3名の計8名である。当調査に基づく成果は令和元年5月に口頭発表を行う予定である。 4.当研究課題遂行に関連して、市民対象の講演会を2回実施した(研究代表者によるもの1回、講師の招聘によるもの1回)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
倉吉方言のアクセント分布が東京方言アクセントのものと根本的に異なっていることを実証するために、アクセント辞典などを使って網羅的に分布の実態を明示しなければならない。本研究期間の最初期(平成29年4月)に、倉吉方言のアクセント分布に関して、語彙種によってある程度の偏りがあるものの、おおむね、「平板型アクセントが少ない」「起伏型アクセントは中高の+3以降、尾高型など、東京方言アクセントでは出現が非常に限られるものがむしろ割合は多い」ということを示し、その後の研究の指針とした。前述の通り、目下、『NHK日本語発音アクセント新辞典』を用いて網羅的に分布を調べているところである。あまりの煩雑さに調査終了の予定が遅れているが、本年度(令和元年度)中葉にはその調査も終わり、それに基づく調査が開始されるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
東京方言アクセントのアクセント型の分布に基づき、倉吉方言でアクセント型の文応がどのように変わっているのかを調べる。予想としては東京の平板型は倉吉で起伏型に移行し、東京の起伏型の降格位置は、倉吉でより後方に移行する。これらについて、倉吉市を含む東伯耆地域(鳥取県東伯郡全域)で地理的、年第的に広範囲に実態調査を行い、上記の予想を裏付けるものとする。研究期間を令和元年度の現在、5年の期間のうちの3年目に当たっている。アクセントの東京との異同、年代による、アクセント型ごとの保持や移行の強度について明らかにした後、研究最終年度(または後2年度から)に当該地域のイントネーションについて調査し、アクセント分布との関連について考える。
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