研究課題/領域番号 |
17K02692
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
吉田 健二 日本女子大学, 文学部, 研究員 (10279820)
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研究分担者 |
林 良子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (20347785)
坂本 清恵 日本女子大学, 文学部, 教授 (50169588)
宇都木 昭 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (60548999)
新田 哲夫 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (90172725)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 調音音声学 / 鼻的破裂音 / 口蓋帆 / 能楽の伝承発音 / MRIムービー / 日本語福井方言 / 英語 |
研究実績の概要 |
おもに以下の4点について成果が得られた。 1) 研究対象となる鼻的破裂音を中心とした音声現象の構音運動の調整をどう記述・定量化するか、という問題について、一定のみとおしがえられた。具体的には、MRIムービー画像にどのような処理を施し、測定・数量化するのが当該計画の目的にかなった適切な方法かということにつき、分担者との議論にもとづき決定し、データ処理作業に入ることができた。この際、MRI画像分析の経験の豊富な研究者によるアドバイス・研修を受けることができたのも、研究費を利用した具体的な成果・利益である。この画像分析処理は、高性能ながら無償の分析プログラム(米国NIH開発のimageJ)を利用しておこなうものであり、当初の予想よりずっと安価になることもわかった(MRI画像を取得してしまえばそれ以上の出費がほとんど必要にならない)。研究の遂行の費用対効果の面で好ましい知見であるとかんがえている。 2) 福井方言の鼻的破裂音の音響面(とくにそれぞれの音声現象の持続時間パターン)について、一定の知見が得られ、日本音声学会全国大会で口頭発表おこない、予稿集論文も執筆した。 3) 上記(1)の方針にもとづき、能楽師の鼻的破裂音のMRI画像処理・定量分析を実施した。この成果を、名古屋音声研究会(名古屋大学)で発表し、分担者と討議をおこなった。 4) 当初の計画どおり、大半のMRI画像データの取得を終了した。具体的には、能楽師2名、英語話者4名、福井方言話者2名からのMRIデータをあらたに取得し、順次分析を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3年計画の2年目にあたる本年は、初年度のおくれをいくらか取り戻すことができたとかんがえている。とくに、当初の計画どおりほとんどのMRIリアルタイムムービーを取得できたことは、重要で具体的な進捗だといえる。また、ここまでの分析により、いくつかある選択肢のうち、リアルタイムムービーが本課題の目的に合致していることが、研究分担者や他の研究者との相談をふまえて確認でき、この方針にもとづく分析を開始、進行できていることも重要である。一方、MRI画像分析には予想したよりもおおくの手間と時間がかかることも判明した。方針は決まったものの、分析の実施は十分に進んでいるとは言えず、取得したデータのかなりの部分がまだ手付かずになっている。この点で遅れが生じていることが本年度の最大の問題点であり、全体を評価すると「やや遅れている」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
採択された当初の計画に予算・時間の余裕があれば実施するとしたとおり、鼻音と破裂音が連続する他の言語の音声現象の記述をおこなう。具体的には韓国語話者、中国ビン南語話者の鼻音の弱化のデータを取得し、これまで取得した言語の音声現象との対照を実施する。 また、MRI画像とは独立に取得した音声データの分析が遅れており、こちらの分析を急ぐとともに、MRI画像データからの知見と統合して対象とする音声現象に関する知見の全体像をまとめる作業が必要となる。 最後に、得られた知見を公表する機会を得てできるだけ多くの発表を行いたい。これにより、今回の研究計画の成功の程度を客観的に評価し、今後の研究の発展のための改善点・反省点をできるだけおおく得る必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
項目5に記したように、構音運動観察の方法を精査した結果、MRIムービーを取得し、フリープログラムimageJ上でトレーシングと測定を行う、という方法で、課題の目的に叶った研究活動が実施できることが確定できた。このため、当初予想した特別な画像処理の依頼や、有償の画像処理プログラムの購入などの出費が不要になり、予定の使用額を下回る結果となった。 また、MRI施設を1回稼働する90分で、2〜3名の話者から十分な量のMRIムービーデータを取得できることも判明した。そこで最終年度では、余裕があったら実施する予定であった韓国語、中国ビン南語の音声についてもMRIデータを取得・分析することが考えられ、上記金額の一部はこれに当てる。また、採択されれば、海外で行われる学会における成果の発表の旅費に当てることも検討している。
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