2017年度は本研究の初年度であったため、本研究における文法項目の現地言語調査を中心に行った。この現地調査では、特に「可能」だけに限定せず、「存在・所有」「テンス・アスペクト」「evidentiality」「自発」の項目も加え、調査地域も東南アジアだけではなく、欧米、日本の方言も調査対象とした。収集した調査資料は台湾原住民語、五島方言、ドイツ語である。特にドイツ語に関しては、詳細な言語調査を実施することができ、今後分析及び考察を行うことで日本語との対照比較を行うための準備が整いつつある。 また、日本語における「存在、所有表現」の歴史的変遷について、文献・資料より考察を行い論文としてまとめ発表した。 「台湾原住民語」に関しては、これまでに現地言語調査を実施してきたサオ語における言語資料をもとに、それらの言語表現からサオ族が物事をどのようにとらえているかについて考察を行い、「サオ族の言語観」という視点から言及し論文にまとめた。 さらに、現地調査によりこれまでに収集した調査内容を精査し、サオ語の辞書および文法解説、テキスト等の研究書の充実を図った。 共同研究者は、韓国語の李朝時代の資料について調査、研究を行い、また、その資料に関しての語彙索引を作成した。さらに、近代韓国語学の研究者である小倉進平の業績・事績について調査し、『方言学事典』における「小倉進平」の項目を執筆した。また、指示代名詞の対照言語学的調査研究として、フィンランド語、チベット語、中国語(上海方言)の調査資料について、データの整理と分析を行った。
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