研究課題/領域番号 |
17K02705
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研究機関 | 尚絅大学 |
研究代表者 |
山川 仁子 尚絅大学, 現代文化学部, 准教授 (80455196)
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研究分担者 |
天野 成昭 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 教授 (90396119)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 日本語音声 / 自然性 / 音響特徴量 / 時間長 / 強度 / 基本周波数 / VOA |
研究実績の概要 |
日本語として自然に聞こえる音声の音響特徴を,音響解析および知覚実験の手法を用いて解明し,自然性に関する科学的知見を得るとともに,日本語音声の自然性を予測する定量的モデルを構築する目的で,平成29年度は以下の2点において研究を進めた。 1.特殊ユニットを含む日本語母語話者・非日本語母語話者の日本語音声の音響特徴の解析 母音の無声化および特殊モーラ等の特殊ユニットを含む音声の自然性に関わる音響特徴を特定するため,自然性の高い日本語母語話者の音声と自然性の低い非日本語母語話者の音声を解析し,両者の音響特徴の差を明らかにした。申請者らが分担者として参画し,構築した日本語音声コーパスから日本語母語話者10名と非日本語母語話者50名(タイ語,中国語,フランス語,韓国語,ベトナム語各10名)が発話した3モーラ長および4モーラ長の単語音声を抽出し,両者の音響特徴を解析・比較した。音響特徴として強度,時間長,基本周波数(F0),VOA(Voice Onset Asynchrony)を用いた。解析の結果,言語によって日本語母語話者との差が見られる音響特徴は異なり,三つ以上の音響特徴において差が見られる言語もあった。 2.自然性評価実験および重回帰分析による自然性を規定する要因の解明 1の音響解析で用いた6言語の音声について,日本語母語話者20名が音声の自然性の5段階評定を行った。自然性評定値が平均以上であった日本語母語話者音声の音響特徴量の平均を母音ごとに求め,これを基準とする非日本語母語話者の音響特徴量の平均二乗誤差を求めた。4種類の音響特徴量(相対時間長距離,相対強度距離,相対F0距離,相対VOA距離)を独立変数とし,自然性評定値を従属変数として重回帰分析を行った結果,日本語音声の自然性を規定する音響特徴として,相対時間長あるいは相対F0が有効であることが明らかになった。次年度はこの二つの音響特徴量を変化させた刺激連続体を用いて知覚実験を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究実施計画で挙げたすべての項目について着手し,研究成果を学会等で報告した。また,交付申請書の「研究の目的」で挙げた4項目のうち,既に3項目に着手しており,平成30年度中に研究成果を学会等で報告する予定である。以上のことから,本研究は当初の計画通り,おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画調書に従い,平成30年度は下記を実施する。 1. 日本語音声の自然性に関わる音響特徴の許容範囲の特定:評定法による予備実験 平成29年度特定された自然性に関わる音響特徴を系統的に変化させて音声の刺激連続体を構成し,評定法による知覚実験を実施して,自然性の大まかな許容範囲を求める。
2. 日本語音声の自然性に関わる音響特徴の許容範囲の特定:一対比較法による本実験 1の予備実験で推定された大まかな自然性の許容範囲のをより詳細に特定する事を目的に,一対比較法を用いた本実験を行う。1の予備実験で特定した許容範囲の重心を求め,その重心から許容範囲外の領域まで,予備実験よりも細かなステップで変化させた刺激連続体を構成し,一対比較法による知覚実験を実施する。その結果から,反応率が50%となる音響特徴の値をロジスティック回帰分析によって解析的に求め,自然性の詳細な許容範囲を求める。得られた結果を日本音響学会などの学会で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 初年度当初に購入予定であった知覚実験用機器の手配が遅れたため,音声知覚実験用機器購入に割り当てた助成金の一部を平成30年度に繰り越すこととした。 (使用計画) 繰り越した助成金は,平成30年度に実施予定の知覚実験用機器や消耗品等の購入に充てる。
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