研究課題/領域番号 |
17K02709
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
塩谷 亨 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (10281867)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 言語学 / ポリネシア諸語 / 対照研究 / 語類 |
研究実績の概要 |
前年度までに取り組んだポリネシア諸語の語類についての三つの問題点、(1)接語・自立語・接辞の区分、(2)動詞の副詞用法と動詞派生副詞的小辞の区分、(3)名詞句と動詞句の曖昧性の解決、の研究成果を含めて、ポリネシア諸語の語類の分類基準及び、それを設定する上での原理の提示の作業に着手した。令和二年度の成果として、上記の三つの問題点に関連して、語類分類基準設定の上で考慮すべきいくつかの事実が明らかとなった。 (1)に関連して、同じ言語のある形態素が同じ形式で接語と接辞の両方に該当する振る舞いをする事例と、歴史的には一つの形態素の異形態と考えられるものが片方は接語、もう片方は接辞として振る舞う事例があることを指摘した。(2)に関連して、一部の言語で、動詞に付加される副詞用法の動詞あるいは副詞的接語として分析してきたものの少なくとも一部について、動詞連続(serial verb)として分析される可能性を指摘した。以上2点について、北海道言語研究会第二十回研究例会にて発表した。また、(3)に関連して、動詞を述語とする文については、その基本構造と動詞に付加される後接語の機能に関して、通時的にも共時的にも比較的安定しているのに対し、名詞を述語とする文については、その基本構造と名詞に付加される後接語の機能に関して、通時的にも共時的にも推移が見られることを指摘した。この点について、北海道言語文化研究第19号にて論文として発表した。 この三つの点は、本研究計画の最後の作業である、ポリネシア諸語の語類の分類基準設定と、分類基準を設定する際の原理の提示を方向付ける重要な着眼点となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和二年度は、前年度までに取り組んだポリネシア諸語の語類についての三つの問題点、接語・自立語・接辞の区分、動詞の副詞用法と動詞派生副詞的小辞の区分、名詞句と動詞句の曖昧性の解決、の研究成果を含めて、ポリネシア諸語の語類の分類基準及び、それを設定する上での原理を提示することを計画していた。コロナ感染拡大にともない、計画していた資料収集ができなくなったため、計画期間を延長し、最終的なまとめの作業は令和三年度に行うこととした。令和二年度には、その前の段階として、語類分類基準の設定とその原理を議論する際に、上記三つの問題点をどのように処理するかについての方策がまとまった。従って、延長された新しい最終年度である令和三年度に、本課題研究の最後のまとめ作業を行うための準備を整えることができたので、概ね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
海外渡航或いは国内出張及び他大学図書館利用が可能になれば昨年度計画していた資料収集を行いたい。しかしながら、現時点では、いずれも厳しい状況である。 更なる出張及び他大学図書館利用は困難と判断された場合には、これまでに収集したデータと現地に赴かなくてもアクセス可能な一部のデータを利用してできる限りデータを拡充した上で、そこまでに得られたデータにより最終的なまとめの作業に入る。 まだ電子化できていない膨大な紙データの処理を加速するための設備を整備して、作業の効率化を図り、可能な限り広範囲のデータを盛り込んだ最終まとめの研究報告を作成したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
文献収集及び言語データ収集のための国内及び海外出張を計画していたが、コロナ感染の広がりにより、海外渡航の中止、及び、図書館等施設の閉鎖及び外部利用者制限により、資料収集計画全てを延期せざるを得ない状況となった。研究期間延長が許可されたので、可能であれば、令和二年度に断念した資料収集を令和三年度に実施したいが、相変わらず厳しい状況が続いている。更なる出張及び他大学図書館利用は困難な場合には、現在までに収集したデータのうち、まだ電子化していない大量の紙データを効率的に処理するための、スキャナ、パソコン、OCRの購入のための使用に充てることを計画している。
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