ドイツ語の未来形<werdenの直説法現在>+不定詞は現在の事態における推量も表す。この形式の歴史的発達において重要なことは、最初に1400年頃に<werdenの直説法過去>+不定詞が発達し、その次に15世紀後半に<werdenの接続法>+不定詞が発達し、最後に現今の未来形である<werdenの直接法現在>+不定詞が16世紀半ば以降に発達したという順番があるということである。ここで問題になるのは、現在の事態についての推量を表す用法がwerden+不定詞の歴史的発達とどう関わるかである。 現在の推量を表す未来形は、静的状態を表す動詞の不定詞から作られる。典型的にはseinを本動詞とする。werdden+不定詞の歴史的発達から見ると、第一段階である<werdenの直説法過去>の発達の時点では、seinを本動詞とする例は現れない。<werdenの直説法過去>+不定詞においては、もっぱら発言を表す動詞や認識を表す動詞や理性で制御できない動作や感情を表す動詞の不定詞が用いられた。こうした動詞の使用の制限をゆるめたのが<werdenの接続法>+不定詞である。<werdenの接続法>+不定詞は間接話法や非現実話法で用いられたが、特に<werdenの接続法2式>+不定詞はseinを本動詞とする例が多く現れており、ここから<werdenの直説法現在>+不定詞における現在の推量の用法が発達したことがうかがわれる。したがって、<werdenの直説法現在>+不定詞がはじめから推量の用法を持っていたという説や、<werdenの直説法現在>+不定詞がまず未来の事態を表す例を発達させたあとに現在の推量の用法を発達させたという説はいずれも否定される可能性があることが明らかになった。
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