研究課題/領域番号 |
17K02711
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
小林 ゆきの 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 講師 (80736116)
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研究分担者 |
川原 繁人 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 教授 (80718792)
桃生 朋子 目白大学, 外国語学部, 客員研究員 (30585807)
磯部 美和 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00449018)
岡部 玲子 専修大学, 文学部, 教授 (60512358)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 言語獲得 / 発話行為能力 / 心の理論 |
研究実績の概要 |
本研究では、心の理論課題と言語課題を幼児に対して実施し、「心の理論の発達」と「言語能力の発達」の詳細を調査するとともに、それらの相関を明らかにすることを目的としている。 令和3年度も、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け、追実験を中止せざるを得なかった。そこで、平成29年度に実験を行った「心の理論の発達」と「発話行為能力」に関する実験データを再考した。新たな知見を加えて論文にまとめ、それを国内の論文集に発表した。 論文の具体的内容は、以下の通りである。本研究では、日本語を母語とする2-3歳児に対し、物体または人間の体の部分が描かれたカードを1枚ずつ参加者に提示し、参加者にはそれぞれの絵に対応する単語を発音してもらうことを求めた。そして、刺激音の絵が描かれたカードが参加者に提示された際、参加者の発話が聞き取りにくかったかのように、「え?」と聞き返し、参加者の単語の発音がどのように変化するかをコーディングした。 実験は三週間の間を空けて2 回に分けて行われた。また、三週間の間、心の理論の発達を促す別の実験として、参加者の親にはおままごとのごっこ遊びを行ってもらった。そして、実験前後で「心の理論」の習得実験であるサリーアン課題を行い、実験参加者の心の理論の発達度を測定した。 本実験の結果から2~3歳児であっても、少なくとも「聞き返された」という状況において、発話の明瞭度を変えることができることが判明した。しかしながら、「心の理論」との相関性については、はっきりとした関係性は見出されなかった。この結果から、「聞き返しに対して発話を明瞭にする」という行為と「心の理論の発達」は直接的には必ずしも関連しないという可能性と、「聞き返し」というタスクが、参加者に不安を抱かせてしまった可能性が考えられる。音響分析などを用いた計量的な分析も含め、これらの可能性の考察は今後の課題とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響により、令和元年度末の3月、及び、令和2年度、令和3年度に予定していた実験を中止せざるを得なくなったため。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染拡大の状況を見つつ実験を再開するが、感染拡大防止の観点から、オンライン実験を中心に実施する。これまでの研究実績を踏まえ、幼児の言語獲得に関して、音声・統語の両側面から更なる追実験を行い、分析を進めていく。その成果を国際学会等で発表し、論文にまとめる。また、「心の理論の発達」と「言語能力の発達」の相関に関しても引き続き考察・検討を進める
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大のため、予定していた実験の実施ができず、予算は次年度(令和4年度)に持ち越しとなった。令和4年度では、感染防止と研究推進の観点から、これまで行ってきた統語、及び、音声・音韻に関する追実験をオンラインを中心に行なっていく。
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