研究課題/領域番号 |
17K02714
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
山越 康裕 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (70453248)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | モンゴル諸語 / ブリヤート語 / モンゴル語 / 分詞 / 言語類型論 / finiteness |
研究実績の概要 |
初年度である平成29年度は、モンゴル諸語における文末用法(=主節述語用法。モンゴル諸語はSOV; Dependent-Headの構造を有するため、主節述語は文末に位置する)に関して、既存資料をもとに横断的に分析を行った。資料は代表者がこれまで現地調査で収集したモンゴル諸語(シネヘン・ブリヤート語、ハムニガン・モンゴル語、モンゴル語ホルチン方言)の自然談話テキストおよび調査票により収集した例文テキスト、さらに他のモンゴル諸語については現在話者が残る中国領内の言語については同種の調査票により収集された例文テキストを、より古い時代のモンゴル語については文献をそれぞれ用いて分析対象とした。 分析の結果、以下のような点を明らかにした。1) モンゴル諸語を横断的に俯瞰した際、北部に分布するモンゴル諸語(シネヘン・ブリヤート語、ハムニガン・モンゴル語、ダグール語)では名詞修飾用法をもつ動詞屈折形式(以下、分詞)が文末用法を有し、かつ定動詞よりも頻繁に用いられる。分詞がコピュラ等を伴わず単独で文末に用いられる頻度は南に分布するモンゴル諸語ほど低くなり、河湟語(甘粛・青海省の孤立的モンゴル諸語群)にはそもそも分詞単独での文末用法が許容されないものもある。2) 古い時代のモンゴル語を分析すると、中期モンゴル語では分詞単独での文末用法はモダリティの観点で有標となる場合にしか許容されないが、近代モンゴル語においてはその制限がゆるやかになる。3) 地理的な分布と古い時代のモンゴル語の状況から、分詞の文末用法は北部モンゴル諸語において徐々に発達し、河湟語ではコピュラを伴う形式がより厳密になっていると推測される。この分析結果については口頭発表として報告済みである。 夏季に実施したシネヘン・ブリヤート語の現地調査では上記分析を補完する目的で、既収集資料の確認と談話資料の採録をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分析自体は予想以上に順調に結果を残すことができた。ただし対象とした資料に制限があったこと、とくに自然談話資料が十分ではなかったことが課題として挙げられる。これは、現地調査を実施する十分な時間を確保することができなかったことが原因である。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況の項で触れているとおり、現地調査に十分な時間を確保することが困難な状況にある。この状況は今後も続くことが予想される。限られたエフォート内で十分な成果を挙げられるよう工夫することを考えている。基本的には当初の研究計画に沿って分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
十分に現地調査の時間を確保できなかったこと、および成果発表のための旅費として国内旅費を計上していたが、実際には旅費が不要だったことから次年度使用額が発生した。
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