研究課題
本課題開始前に収集した,大学生協のパソコンカウンターにおけるサービス場面のビデオデータの整理を進めるべく,リサーチアシスタントにデータの整理方法と会話分析専用の転記方法に基づく文字起こしを指導し,データの整理を行った.また,新規データの収集としては,①コンビニエンスストアにおけるサービス場面のビデオデータ(連携研究者森本郁代による),②ジュエリーショップにおけるサービス場面のビデオデータ(連携研究者平本毅による),③大学図書館受付におけるやりとりのビデオデータ(研究協力者黒嶋智美による)の収集を行い,プロジェクトチーム内のメンバーで共有した.本課題の研究チームメンバーは,それぞれ日本語相互行為における依頼行動の記述・分析に取り掛かっており,以下が現時点での成果報告である.研究代表者林 誠は,収集したビデオデータから依頼場面の発話を抽出し,その言語的構成や非言語的資源の整理を行った.連携研究者森本郁代は,大学生協パソコンカウンターにおけるサービス場面に注目し,そこに見られる相互行為の連鎖組織と依頼行為の関連を精査した.連携研究者平本毅は,ジュエリーショップで宝石類を試着する顧客の依頼行動を記述した.連携研究者早野薫は,大学図書館受付において,図書館員たちが言葉を用いることなく依頼、申し出、受諾などの行為を行っている様を、身体、目線、タイミングに着目して分析した.研究協力者黒嶋智美は,依頼の発話の途中で発話者が産出を休止させるタイミングで受け手が依頼に反応する現象を分析した.これらの成果は、2017年12月26日に名古屋大学にて行ったプロジェクトミーティングで各自が報告し,それをもとに活発な議論が行われた.
2: おおむね順調に進展している
研究代表者、連携研究者,研究協力者は,それぞれ必要なデータを収集し終え,プロジェクトチーム内での共有も完了しており,現在はそれぞれに分析を進めている.平成29年度末の時点では,それぞれの分析は途中段階であるが,12月のプロジェクトミーティングで報告・議論を行うこともできた.次年度は,さらに分析を進め,国内外の学会等で発表していく予定である.
平成30年度は,8月に名古屋大学で再度プロジェクトミーティングを行い,各自の分析の精度を高める議論を行うとともに,それぞれの分析を論文の形にまとめる道筋をつける.同時に,会話分析研究会等の国内研究会にて他の研究者のフィードバックを得るとともに,平成31年度に香港にて開催予定の国際語用論学会(International Pragmatics Conference)にてパネルの応募を行い,国外の研究者との意見交換を図る予定である.
次年度使用額が生じた主な理由は,人件費と物品費の使用が交付額を下回ったことである.人件費に関しては,ビデオデータの文字起こし作業をリサーチアシスタントに委託して行う際に使用しているが,この作業を行うには会話分析のトレーニングを十分に受けた人材が必要であり,昨年度はそのような人材で作業を請け負える状態にいる者が少なく,結果的に人件費の使用が予定を下回った.これに関しては,今後人材確保をより積極的に進め,文字起こし作業を軌道に乗せるよう努める.物品費に関しては,高性能ビデオカメラのモデルチェンジのタイミングを見据えて,昨年度に購入予定のビデオカメラを買い控えた経緯があることと,購入予定の書籍が諸々の事情でまだ購入できていないことがあげられる.これに関しては,今年度それぞれ予定通りの購入を行う予定である.
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
社会言語科学
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