まず、前年度より取り組んできた2つの課題(中国語における物語構築の特徴及び中国語の名詞句構造の文法的特徴)について論文を執筆し、公開した(2件)。また、本研究課題で取り組んできたテーマについて、国際シンポジウム及び国際学会において口頭発表を行った(4件)。 本研究課題の最終年度に当たる本年度は、本研究で明らかにした各個別課題について中国語の言語実態と学習者の習得状況を総括し、日本人中国語学習者を対象とした中国語教育においてどのように応用すべきか、横断的考察を行った。 本研究課題で取り組んできた個別課題としては、主に①可能表現、②禁止表現、③名詞句構造における語順、④物語構築の様相の4点が挙げられるが、①②に関しては、従来の中国語教育では複数の文法項目に跨っており、導入される時期も順序も異なることから、学習者の習得状況は中上級レベルに至っても芳しくない。同一ジャンルに属する表現を体系的に捉えるためのシラバス、教育文法の設計が必要である。また、③に関しては中国語教育において取り上げられること自体少ないものの、多項連体修飾構造の語順と意味機能(<限定>と<描写>)は密接不可分の関係にあり、また、語順を決定する際に数量詞の位置が参照点となる。こういった視点は中級レベル以上の作文教育などで応用が可能であろう。④は視点(中国語では注視点)の置かれる対象と構文選択の関連性を調査したものであるが、話者が何を見てどう描写するかは言語によって異なる。一通り文法項目を学んだ学習者が目標言語で物語を構築する際、文法的には正しい表現であっても母語話者のそれとはどこか異なり、不自然に感じられる原因について、本研究では授受表現、ヴォイス表現等を取り上げ、考察を行った。
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