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2019 年度 実施状況報告書

江戸・明治期日朝往復ハングル書簡類データベースの構築

研究課題

研究課題/領域番号 17K02725
研究機関大阪大学

研究代表者

岸田 文隆  大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (30251870)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2022-03-31
キーワード対馬宗家文書 / ハングル文書 / 雨森芳洲 / 朝鮮語通詞 / かな表記朝鮮語 / 束田多四郎
研究実績の概要

本研究においては、江戸中期から明治初期にかけて分布している日朝往復ハングル書簡類を網羅的に収集し、翻刻・和訳・文献言語学的考察を付したデータベースを構築する。日朝往復ハングル書簡類は、従来公開がなされていなかったため、また、各地に断片的に伝わっていたため等の理由により、その全貌を把握することが困難であったが、近年の資料公開の機運に乗じ、網羅的な調査・分析を企図するものである。このデータベースは、朝鮮語史のみならず、日朝関係史などの研究にも有用な情報を提供するものと考えられる。
今年度は、江戸時代の対馬の朝鮮語学の変遷、とくに雨森芳洲による教育システムの改革の観点から、日朝往復ハングル書簡類の分布状況を分析した。その結果、通詞の家庭内の口伝教育から藩による語学テキストを用いた朝鮮語教育への転換により、対馬の朝鮮語通詞がハングルを理解するようになり、このことが日朝間の文書伝達の在り方にも影響し、以後、ハングルによる文書伝達が行われるようになったことが確認された。また、前年度に収集した、富山市立図書館山田孝雄旧蔵書「朝鮮口聞書」について文献学的・言語学的検討をおこなった。その結果、本書の編纂者の束田多四良は、1760年頃から1800年頃まで対馬・釜山倭館・長崎等の地で活動した対馬藩の朝鮮語通詞であり、本書の成立時期および成立地も同人が活動した時期・地域と一致すると見られること、ただし、本書にあらわれる朝鮮人漂流民との対話の例文からは、対話の場面として九州あるいは本州の某地が想定されていることがわかり、本書はかかる地域の朝鮮人漂流民の漂着地で使用されることを目的として編纂されたものであること、さらに、本書の朝鮮語かな表記は、18世紀初に成立した「全一道人」や「朝鮮語訳」よりも、たとえば母音「・(アレア)」の非音韻化に関して、音韻変化のより進んだ段階を反映していることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究における調査対象の資料の大半を所蔵している対馬歴史民俗資料館が目下建て替えのため閲覧業務を中止しているため。今年度は、やむを得ず、他所に所蔵されている資料の収集や既収集資料の分析調査を優先しておこなった。また、3月に大韓民国国史編纂委員会所蔵の対馬宗家文書の調査旅行を計画していたが、予期せぬ新型コロナウイルス事態により断念せざるをえなかった。

今後の研究の推進方策

次年度以降は、未入手資料の収集、翻刻、和訳、文献学的検討をおこなう。未入手資料の収集については、「分類紀事大綱」「朝鮮通信使記録」等を中心とした歴史記録類や明治期の資料などのうち、今年度に収集しえなかったものについて、現地調査をおこない、未入手資料の収集につとめる。翻刻については、上記の資料のうち、収集できたものを順次翻刻・入力する。和訳については、前年度に和訳作業ができなかった資料につき、和訳を作成する。また、和解が存在する場合には、その翻刻も実施する。文献学的検討については、収集した書簡類を関連する歴史記録類と照合し、発信者・受信者の同定、発信年代の比定等、文献学的検討を加える。
対馬歴史民俗資料館は建て替えが完了し、閲覧業務を2020年度中に再開する予定なので、いままで遅滞していた該所の資料調査を集中的に実施する。また、新型コロナウイルス事態が終息すれば、韓国国史編纂委員会の資料調査も実施する。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由:当初2019年度中に開館するはずであった対馬歴史民俗資料館の開館がおくれ、調査旅行を実施できなかったため、また、3月に予定していた大韓民国国史編纂委員会所蔵の対馬宗家文書の調査旅行が、新型コロナウイルス事態により実施できなかったため。
使用計画:対馬歴史民俗資料館は2020年度に閲覧業務を再開する予定なので、いままで遅滞していた調査旅行を実施する。また、新型コロナウイルス事態が終息すれば、韓国国史編纂委員会所蔵の対馬宗家文書の調査旅行も実施する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 富山市立図書館山田文庫所蔵「朝鮮口聞書」解題ならびに翻刻2019

    • 著者名/発表者名
      岸田文隆
    • 雑誌名

      『ユーラシア諸言語の動態Ⅲ ―言語の多様性と類型と混成言語―』CSEL21

      巻: 21 ページ: 21-48

    • 査読あり
  • [学会発表] 対馬の朝鮮語学2019

    • 著者名/発表者名
      岸田文隆
    • 学会等名
      国際訳学書学会第11回国際学術会議「東アジアの訳学政策」
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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